『天空の城ラピュタ』(86)
意中の女の子のハートを射抜く目玉焼きトースト
監督:宮崎駿 声の出演:田中真弓、横沢啓子、寺田農、初井言榮、常田富士男
スタジオジブリの作品に登場する料理、通称「ジブリ飯」。『ルパン三世 カリオストロの城』(79 ※ジブリ作品ではないが宮崎駿監督作)のミートボール・スパゲティ、『となりのトトロ』(88)の桜でんぶが乗ったお弁当、 『魔女の宅急便』(89)のニシンとかぼちゃのパイ、『千と千尋の神隠し』(01)の肉団子など、どれもこれも食欲をそそる料理ばかりだ。熱心なファンは独自のレシピで「ジブリ飯」を再現し、せっせとInstagramに投稿。天下のジブリは、食の世界まで影響力を及ぼしているのである!恐るべし。
その中でも特に人気なのが、『天空の城ラピュタ』(86)に登場する目玉焼きトースト。トーストに目玉焼きを乗せただけのシンプルな料理だが、ファンの間では「ラピュタパン」と呼ばれ、あるインターネットの調査によればその認知率は何と4割を超えるという。ドーラ一家に追われて鉱山の地下道に逃げ込んだパズーとシータが、束の間の休息に口に入れるのが、この「ラピュタパン」。いつの間に目玉焼きを作ったんだ?フライパンでも持っていたのか?と一瞬不思議に感じてしまうが、実はドーラに追われる直前に、パズーが家で目玉焼きを作っているシーンがある。逃げる際に、その目玉焼きをカバンに入れていたのだろう。パズー、実に用意周到なり。
ここぞのタイミングで愛しのシータに「ラピュタパン」を渡し、他にもリンゴが1個に飴玉が2つあることをアピール。すっかり気を良くしたシータは、「パズーのカバンって魔法のカバンみたいね。何でも出てくるもの」とべた褒め。意中の女の子のハートを射抜くにあたって最も重要なのは、あらゆる状況に対応できるサバイバル能力なのだ。「ラピュタパン」はその象徴的料理と言えるだろう。
なお食すにあたっては、男子は一気に目玉焼きを口に入れ、女子は目玉焼きをしずしずと口に入れることが望ましい(要はどっちも先に目玉焼きを食べる訳だ)。「ラピュタパン」を「ラピュタ食い」!これがジブリファンたる者の正統的な食事法である。
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。