© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited
『アンモナイトの目覚め』フランシス・リー監督 人は人との出会いでこんなにも変われる【Director’s Interview Vol.118】
スタントマンもボディダブルも使わない
Q:フランシス監督の演出スタイルについて教えてください。
フランシス:私の演出スタイルは独特で、完全にキャラクター主体で進めます。私の映画に出演する俳優には私のスタイルで演じてもらいます。本作でも、ケイトもシアーシャも含めた全員にそうしてもらいました。
ケイトとシアーシャとは撮影3カ月前から準備を始めて、直接会って話し合いながら役の背景をゼロから作り上げました。2人が演じる役の人生を、生まれた時から詳細に決めていったんです。好き嫌い、感情面、性生活…すべてを想像しキャラクターを作り上げました。また、私はごまかしを好まないので、役が映画の中で行うことはスタントマンもボディダブルもハンドダブルも使いません。だから2人には役が持つ技能も習得してもらいました。
『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited
ケイトはライム・レジスの海岸で、化石専門家に習いながら何週間も化石発掘作業を行いました。泥の中から石を掘り起こし、石を打ち砕いて化石を探し、見つかった化石を磨く。劇中で披露している技能をすべて身につけてもらいましたね。一方でシアーシャはピアノを習い、針編みレースの編み方を学びました。2人とも真剣に打ち込んでいましたよ。
ケイトとシアーシャの演技には深く感動しましたね。今話したように、2人はそれぞれの方法で役にのめり込み、身も心も別人になりきっていた。2人の演技には真実と強く激しい感情が込められていました。そして、私やお互いに最大限の敬意を払い、私の考えていることを形にしてくれた。驚くほど心が揺さぶられ、美しい関係を表現してくれたんです。
こうしてキャラクターを構築し、役者本人が動作を行うことで物語の信憑性と厚みが増します。役の研究は重要な要素です。キャラクターの身体面や動き方、自分が住んでいる世界をどう思っているのかに影響するんです。また、監督としてはもう1つ利点があります。演者が作業の手順や注意点を熟知していることで撮影の安全性が増すんです。