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16ミリフィルムが秘める新たな映像表現の可能性 映画『刻』の挑戦【CINEMORE ACADEMY Vol.17】

(c)映画「刻-TOKI-」実行委員会

16ミリフィルムが秘める新たな映像表現の可能性 映画『刻』の挑戦【CINEMORE ACADEMY Vol.17】

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デジタル撮影のメリット



Q:今までずっとフィルムの話をしてきましたが、一方でデジタルカメラでの撮影に関しては、皆さんどういった印象をお持ちですか?


塚田(監督):1つ前の長編作品も芳賀さんに撮影していただいたのですが、それはデジタルで撮影しました。でもそれはデジタルで良かったなと思いますね。デジタルは準備が早くて、「今!」っていうときにすぐ撮れるのが良いですね。ドキュメンタリーなんかだと絶対デジタルの方がいいでしょうね。


先ほど芳賀さんが、「フィルムだと主観が撮れない」と言っていましたが、それはすごくよく分かります。私は多分、主観ではなく第三者の目で客観的に空間を見て演出していることが多くて、それにはフィルムがすごく相性がいい気がしていますが、前の作品のデジタル撮影で、主観映像のようなものを撮っている時には、特に相性が悪い気はしなかったので、そこにはデジタルのメリットを感じましたね。


芳賀(撮影監督): GoProの映像もデジタルですし、最先端のALEXAのカメラもデジタルなので、デジタルと一言で言ってもすごく幅広くて、色んな可能性があると感じています。最近観た『アウトポスト』(20)という戦争映画では、多分α7のような小さくて機動力の高いカメラを使って撮影している部分があって、被写体にすごく近い距離で撮っているんです。更にドローンも駆使していて、昔の『プライベート・ライアン』(98)をより進化させたようで、すごかったですね。


『アウトポスト』予告


また、デジタルは、グレーディングする人間のスキルによって、同じカメラで撮っても全然違う映像になりますし、『ブレードランナー 2049』(17)はすごく若手のスタッフがグレーディングを担当したと聞きます。今の時点で、もう表現出来ないことはないというくらい、面白いことがたくさん起きているので、その進化には乗り遅れないようにしたいですね。


今井(プロデューサー):僕自身、フィルムで撮りたい気持ちはありますが、今後はデジタルで撮るものが多くなると思います。でも結局はどこにお金を使うかが重要で、デジタルは見えすぎるぐらいクリアでシャープな映像になるので、美術や色にお金を使う必要があるでしょうね。デジタルでの色調整のフローも、こだわればどんどん複雑になっていくし、やることと出来ることが多すぎる点が、デジタルの良いところでもあり悪いところである気がしています。

 

(c)映画「刻-TOKI-」実行委員会


Q:イマジカさんとコダックさんはデジタルでの撮影についてはどう思われますか? デジタルでの撮影を踏まえた上で、フィルム撮影で新たに分かったことなどがあれば教えてください。


井上(イマジカ):我々はラボなので、ラボ存続のためにはできるだけフィルムで撮影していただきたいという気持ちはあるのですが、デジタルと並んで、映像表現の選択をしてもらえる場を提供出来ればと思っています。


例えば、同じスタッフで同じ内容の映画を撮ったとしても、デジタルを選択するかフィルムを選択するかで、仕上がりは全く別のものになると思います。そういう意味では、デジタルもフィルムも多種多様にある表現の一つかなと思っています。


山本(コダック):撮影監督の方々に話を聞くと、デジタルカメラがこれだけ進化した中でも、デジタルで撮ったものと16ミリフィルムで撮ったものを比べると、やっぱり16ミリの画はデジタルでは表現できないとの意見が多かったです。35ミリフィルムだと綺麗過ぎて、パッと見た感じはデジタルと区別がつかないという意見もあり、16ミリの質感はやはり独特だと、皆さん口を揃えておっしゃっていました。


フィルムスキャンとグレーディングの影響も大きいと思いますが、16ミリでの撮影は、撮影監督が表現したい画を実現させるものになっている印象がありますね。




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