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16ミリフィルムが秘める新たな映像表現の可能性 映画『刻』の挑戦【CINEMORE ACADEMY Vol.17】

(c)映画「刻-TOKI-」実行委員会

16ミリフィルムが秘める新たな映像表現の可能性 映画『刻』の挑戦【CINEMORE ACADEMY Vol.17】

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『刻』がもたらすフィルム撮影の将来



Q:では最後に、映画『刻』がもたらす、フィルム撮影の将来についてお聞かせください。 


塚田(監督):私は純粋に、この作品をフィルムで作りたいという希望があっただけなので、フィルムの将来に対して何か影響を与えるとまでは考えてなかったのですが、ただ、私たちがこれから10年間『刻』をフィルムで撮り続けることで、ラボやフィルム、フィルムカメラにも存続していただく必要があるのは事実です。


『刻』は小さな作品ですが、10年間フィルムで撮るという行為が、フィルムに関わる皆さんが存続するための理由の一つになってくれれば、それは『刻』がフィルムに対して出来る一つの力ではないかと思っています。


芳賀(撮影監督):デジタルの作品が増えている一方で、フィルムで映画を作ろうという意志を、いろんなところで感じています。ハリウッドだと、クエンティン・タランティーノやクリストファー・ノーランが、ラボを新たに作ろうと動いていたり、アカデミー賞撮影賞も最近はALEXA作品が受賞し続けたなかで、『ラ・ラ・ランド』(16)が久しぶりに35ミリフィルムの作品で撮影賞を受賞したりと、そういうニュースを見ると、デジタルだけだとやっぱり面白くないなって思いますね。


最近、撮影監督の重森豊太郎さんが、『マチネの終わりに』(19)という作品で、35ミリフィルムで撮影して、ポジ現像してスキャンされたらしいのですが、それを映画館で観たときは、フィルムに刻まれた質感や美しさを強く感じました。日本映画でもこういうことが出来ているのはとても良いですよね。


『マチネの終わりに』予告


今は、フィルムで撮る作品がいろいろ動いているという話も聞きます。僕らもこれから10年間、16ミリで撮ろうとしていますが、そのことが微力ながらもフィルムが残り続けるきっかけになるのであれば、それはすごく嬉しいですし、ずっと残っていって欲しいですね。


今井(プロデューサー):『刻』は小さな作品なので、残念ながらフィルムの存続に関わるような大きな規模のプロジェクトではないかもしれません。予算も少ないので、コダックさんにもイマジカさんにご相談している部分も多く、フィルムの存続どころか逆にご迷惑をお掛けしているのではないかと思っているくらいです。


ただ、規模は小さいですが、クラウドファンディングやSNSでの告知なども実施していますので、それをきっかけに多くの方に16ミリフィルムの現状と良さを知っていただければと思っています。10年かけて撮っていくなかで、『刻』の活動を知ってフィルムの良さに気づいてくれる方が増えていくと嬉しいですね。


映像表現として、今はデジタルが進化し続けていますが、今後もしかしたら、今までと全然違うフィルムが開発されるかもしれないし、フィルム撮影がまた活発になるかもしれない。将来的には何がどうなるか分からないので、フィルムで何か面白いことが起こればいいなと、そういった夢があってもいいですよね。



(c)映画「刻-TOKI-」実行委員会


井上(イマジカ):フィルムの現像所って、古参の年配スタッフが多いイメージがあるかもしれませんが、実際働いているスタッフの中には、新入社員として入ってきた若手もいるんです。これはつまり、会社として現像所をこれからも存続していこうという意志の表れでもあります。


また、『刻』は、今後10年間フィルムで撮影されるということですので、最低でも10年以上は続けなければという、責任と意志を持って取り組んでいきたいと思います。もちろんコダックさんには、これからもフィルムを作っていただかないと、我々の事業も存続しないので、お互いに協力し合って、フィルムの現場を盛り上げていきたいですね。


山本(コダック):フィルムというものは撮影における選択肢の1つです。そして、皆さまが、フィルムを選択していただいて、こだわりを持って撮影していただく限り、コダックとしては、フィルムを製造、販売していきます。そこはご安心いただければと思いますし、それがフィルムメーカーとして果たすべき責任だと思っています。今後とも選択肢としてフィルムが残っていけるよう、弊社としても努力していく所存です。



(c)映画「刻-TOKI-」実行委員会



今回話を伺って意外だったのは、古くてノスタルジーを感じていた16ミリフィルムというものが、映像表現の新しい可能性を秘めた“新しい”媒体だということ。そこには、衰退していく過去の遺産という負のイメージはなく、16ミリフィルムでなければならない理由が明確に存在していた。


10年間フィルムで撮り続けるという、映画『刻』のプロジェクトには大変な苦労や負担も予想される。もちろんプロジェクトにはそれなりのコストがかかるため、10年間で3度のクラウドファンディングが予定されており、ちょうど先日、第一回目のクラウドファンディングが終了し、何とか目標の1,000万円に到達したところだ。


今後もクラウドファンディングやSNSでの告知などは実施され、撮影を続けていくとのこと。一映画ファンとしても、映画『刻』とフィルム撮影について、その推移を見守っていきたい。



映画『刻』クラウドファンディングページ

https://motion-gallery.net/projects/toki

映画『刻』公式ツイッター

https://twitter.com/tokifilm



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



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