『その日、カレーライスができるまで』主演:リリー・フランキー × 監督:清水康彦 × 企画・プロデュース:齊藤工が目指す、“大人の事情”0%の映画制作 【Director’s Interview Vol.139】
遊びのように和気あいあい、だがその奥には揺るぎない信念が滲む――。
俳優・斎藤工が映画制作者・齊藤工として企画プロデュースを務め、『MANRIKI』(19)ほか多数の作品を共作してきた清水康彦監督、長編監督デビュー作『blank13』(18)で初タッグを組んだリリー・フランキーと“再共闘”した映画『その日、カレーライスができるまで』が、全国の劇場で公開中だ。
本作は、52分のひとり芝居。雨が降りしきる夜、アパートの一室で過ごす孤独な男・健一(リリー・フランキー)の過去や心情が、少しずつ紐解かれていく。観客の想像力を刺激させる物語に野心的な演出、リリーの深みある名演が、カレーのようにコトコトと煮込まれ、ラストには何とも心に染み入る一皿が完成している。
ドラマ『ペンション・恋は桃色』(20)に続く、三者のコラボレーション作。彼らは作品を作り続けることで、“点”としての各作品の面白さだけでなく、“線”としての改革を成し遂げようとしている。楽しく、ささやかに、だが本気で――。創作活動にかける想いを聞いた。
Index
- 真正面からはクリエイティブな話をしない齊藤工
- 齊藤工が感銘を受けた、リリーの『獄門島』評
- リリーが感じた、齊藤工と北野武の共通点
- 齊藤工×清水監督×小林Pが見せた、日本映画の新たな可能性
- エゴを持っていない人たちの集まり。だから現場がスムーズ
- 「大人の事情」が一切ない現場に参加する喜び
- 「おかしい」と思うことを、自分たちが変えていきたい
- 物語性に込めた、「体制と勝負したい」という信念
真正面からはクリエイティブな話をしない齊藤工
Q:それぞれに多くの作品でコラボレーションしていますが、御三方が揃うのは久々ですか?
リリー:そうですね。清水監督とは『その日、カレーライスができるまで』の撮影以来じゃないかな。
清水:イギリスに行っちゃいましたもんね。本作の「いまこんな感じです」という映像は、日本とイギリスでやり取りしながら観ていただきました。
リリー:(齊藤)工くんとは作品が結構かぶっていて、今年は割とべったりですね。毎日、工くんの体臭をかぐっていうシーンが続いてて(笑)。めっちゃいいにおいがするんですよ。赤ちゃんみたいな(笑)。
齊藤:初めて言われた……(笑)。
リリー:この人が鈍感なのか俺が気配を消せてるのか、めっちゃ近くに行ってにおいをかいでも気づかないんですよ(笑)。
齊藤:リリーさんは気配を完全に消せるんですよ。犯罪者向きのオーラの消し方です(笑)。
リリー:(笑)。
『その日、カレーライスができるまで』齊藤工(企画・プロデュース)
Q:御三方の仲の良さが伝わってきますが、普段はどんな話をされているのでしょう。ものづくりの話が多いですか?
リリー:清水さんとは、大体撮影絡みで話すことが多いですね。
清水:むしろ、撮影を通さないと話せない……(笑)。
リリー:清水さんは、工くんとはまた違った意味のコミュ障ですからね。撮影のことだと饒舌なんですが、他のことだと口ごもる(笑)。
工くんは真逆で、プライベートのときにクリエイションの話をすると照れちゃう。真正面から話したがらないというか、寄り道しながらたどり着きたい感じですね。
齊藤:タイプの違うコミュ障がいま、リリーさんの左右に居ます(笑)。
リリー:で、寄り道をしながらクリエイティブな話をしようとすると、本題に辿り着く前に「お願いします!」って現場から呼ばれてどっちかがいなくなる(笑)。
齊藤:いつも辿り着けないんですよね……(笑)。