キャステイングに込めた狙い
Q:人間の役を俳優、神様の役を声優が担当するというキャステイングは興味深く、蒔田彩珠さん演じるカンナ、入野自由さん演じる夜叉、坂本真綾さん演じるシロの組合せが、とても良かったです。その考えに至った経緯や実際のキャスティングについて教えてください。
四戸:皆さんとは、ご縁でご一緒できたところが本当に大きいです。以前、愛知県豊田市で映画祭を立ち上げたのですが、そのときに知り合ったのが、『名探偵コナン』『シティハンター』など数々のアニメを手掛けられたプロデューサーの諏訪道彦さんと、声優の高木渉さんでした。お二人ともこの映画の企画に賛同してくださって、「ぜひ一緒にやらせてよ」と言ってくださったんです。
高木さんは「自分は声優歴が長いから、誰か一緒にやりたい声優がいるなら言ってよ。俺から本人に言うから。」とも言ってくれました。そこで、僕らの中でイメージとしてあった、夜叉=入野自由さん、シロ=坂本真綾さんへ、それぞれ繋いでいただいたんです。高木さん経由で企画書をお二人にお送りしたところ、「企画書を拝見しました。すごく思いを込めて作られている企画だと言うことがすごくよくわかりました。」と、出演していただけることになりました。
『神在月のこども』 (c)「神在月のこども」製作御縁会
また、諏訪さんのご縁で、神谷明さんや柴咲コウさんにも出演していただくことになり、統括プロデューサーのオシアウコさんのご縁で、井浦新さんや新津ちせさんが出演していただくことが決まっていきました。
そうやっていろんな方の出演が決まっていく中で、一番難航したのが主人公のカンナ役でした。少なくとも10代の方に演じて欲しかったのですが、10代の女優さん自体がそれほどは多くはないんですよね。そんなとき、総作画監督の佐川遥さんが、カロリーメイトのCMに出ている蒔田彩珠さんの動画を送ってくれて、それを見た瞬間に「カンナだ!」と思ったんです。それで「カンナは蒔田さん以外いない!」という一心で、オファーさせていただきました。
Q:確かにカロリーメイトのCMは印象的ですよね。蒔田さんは是枝裕和監督の作品をはじめ、すでにいろんな映画に出ていますが、明らかに光っていて存在感がすごいです。
四戸:実在感があるんですよね。演じている部分もあるのでしょうが、本当にそういう人が実在している感じがするんです。その実在感というのは、この作品でも大事にしたかった点です。それもあって、人々の役は、それを演じる期間、日常生活にまで役を憑依して実在させる俳優さんたちに、神々の役は、実在しない存在にまで声という命を吹き込める声優さんたちにお願いしましたが、蒔田さんはまさに、実在しているカンナを見つけた感覚でオファーさせていただきました。