母を亡くした12歳の少女が、失ったものを取り戻すため冒険の旅に出る。少女の視線を通じて描かれるのは、どこか失われつつある日本の原風景。そんなアニメーション映画『神在月のこども』を手掛けたのは、広告宣伝におけるコミュケーションデザインに携わってきた四戸俊成氏。同氏はこの映画の原作を手掛け、コミュニケーション監督という立場で、企画から完成まで導いてきた中心人物だ。
日本古来の神々を人気声優である入野自由や坂本真綾らが演じ、日常を生きる人々を演じるのは、蒔田彩珠に井浦新、柴咲コウらの豪華俳優陣。スタッフには、音響監督に岩浪美和、脚本に三宅隆太ら、第一線で活躍するスペシャリストが名を連ねる。また、応援購入サービス「Makuake」では、前売り券とツーリズム券の応援購入を実施するなど(9月18日まで)、手掛けた取り組みも意欲的だ。そんな四戸氏だが、意外にも長篇映画は今回が初挑戦。今回はたっぷり時間をいただいて、同氏に話を伺った。
Index
- アニメを通じて日本をコミュケーションデザインする
- “ご縁”で繋がったスタッフたち
- アニメでもロケハンする意義
- ロジックを超えたところにあるもの
- キャステイングに込めた狙い
- 岩浪美和、三宅隆太、一流スタッフたちとの仕事
- 会社の壁に貼った「ジブリの風をリアルに」
アニメを通じて日本をコミュケーションデザインする
Q:本作の原作を手掛けられていますが、これは映画用に作られたのでしょうか。また、話の内容を出雲の「神在月」にされた理由を教えてください。
四戸:この原作は映画用に作ったものです。私は普段「コミュニケーションデザイン」という仕事をしていて、商品やサービス、作品やロケーションなども含めて、その魅力を多くの方に知ってもらえるように、TV-CMやWEB、SNSやリアルイベントを使ったコミュニケーションを設計しています。
以前その仕事で、日本の原風景をテーマにした映画について、コミュニケーションデザインを担当することがあったのですが、それがきっかけで、自分たちでも日本の原風景をテーマに作品を作ってみたくなったんです。日本で2021年にオリンピックが開催されて、2025年に万博が開催されるこのタイミングで、日本という島国の魅力を国内外の方々に改めて感じていただきたいなと、そう思いました。
『神在月のこども』 (c)「神在月のこども」製作御縁会
だから今回は、アニメーションを使ってこの島国の魅力をコミュニケーションデザインをしている感じなんです。アニメのために物語を作ったというよりも、日本にある文化や価値観を知ってもらうためにこの物語を作ったと言うのが正しいかもしれません。
出雲の「神在月」という題材についても、今お話しした意図をもって書かせて頂きました。本作でプロデューサーとロケーション監督を担った、私と同じ会社の三島というスタッフが島根県の出身でして、その彼が「神在月」のことを教えてくれたんです。島国の根っこと書く「島根」に、翌年の「ご縁」を結ぶ会議のために、あるひと月、全国の八百万の神々が集う。「神在月」という云われをアニメで紐解いていくことで、日本の魅力の一端を感じていただけるのではないだろうかと。それが始まりでした。