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『未来世紀 SHIBUYA』白石晃士監督 明るいディストピアSFで描いた、現在と地続きの近未来【Director’s Interview Vol.166】

『未来世紀 SHIBUYA』白石晃士監督 明るいディストピアSFで描いた、現在と地続きの近未来【Director’s Interview Vol.166】

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目指したのは明るいディストピアSF



Q:本作は暗い未来世界を描くディストピア SF だと思うのですが 、作品のテイストはどこかあっけらかんと明るくて演技のテンションも高い。そういったテイストはタイトルも似ている『未来世紀ブラジル』(85)の影響もあるのでしょうか。


白石:実は昨日ちょうど「午前十時の映画祭」で『未来世紀ブラジル』を見て来たんですけど、あの作品の影響もあるとは思います。でも『未来世紀ブラジル』はある意味、陰鬱に終わるじゃないですか。ディストピアものってどうしてもそういう暗いイメージになる。


一方で、『26世紀青年』(06)というSF映画があるのですが、それは、未来で人類が超おバカになっているという内容なんです。あまりにもみんな未来でバカになりすぎて、ハチャメチャになっていくというコメディなんですが、そんな視点でディストピアSFがやれるんだっていうのがすごく面白くて。この作品もそういうテイストが面白いんじゃないかと。


最初は気軽に YouTubeをチラ見するくらいの感覚で観始めて、でも観ていくと想像しなかったところまで連れて行かれるような話にしたいなと思いました。


Hulu オリジナル「未来世紀SHIBUYA」©HJホールディングス


Q:全体を通して「記憶」が大きなテーマになっています。SF作家のフィリップ・ K・ ディックのような、人間の実存的な不安が通奏低音としてありますね。


白石:人工知能と人間の境目や、AIをテーマとして扱いたいという思いが元々すごくありました。人間と機械を隔てているものが曖昧になっていった結果、良いこともあるけど、悪いこともあるかもしれない。古くは諸星大二郎さんの「生物都市*」みたいな作品が好きだったりするので、本作は自分にとっての「生物都市」的な感覚がありましたね。誰にも言ってなかったですけど(笑)。


*:「生物都市」:1974年に発表された漫画家・諸星大二郎、初期の代表作。機械や金属と人間が融合してしまう怪現象を描いた。第7回手塚賞入選。


Q:テーマで言うと『ブレードランナー』(82)的な部分もあるし、 AI との恋愛というモチーフは『her/世界でひとつの彼女』(13)を思い出します。意識された先行作品はありますか?


白石:どういう風に未来感を構築するかというところでは、『トゥモロー・ワールド』(06)ですね。すごく好きなSF映画で、この映画の基本の見た目は現代とそんなに変わらないんです。でもディテールですごく未来感を構築している。「未来ってまさにこうかも」って思えるリアリティがあるんです。その線を狙うんだったら勝算があるんじゃないかと思って、感覚的な部分で参考にしましたね。


Q:時代設定が2036年で、今から15年後というのも、未来感を構築するためのものなんでしょうか。


白石:そうですね。あまり遠い未来になりすぎない、身近に感じられることが狙いでした。けど近すぎるとリアリティのなさが際立っちゃうし、遠すぎても現在と地続きの感覚がなくなってしまう。

それで設定は20年後か10年後か、みたいな話をしていたんですけど、脚本執筆の終盤で「これは15年後くらいがちょうどいいかもね」という話になりました。




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