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『未来世紀 SHIBUYA』白石晃士監督 明るいディストピアSFで描いた、現在と地続きの近未来【Director’s Interview Vol.166】

『未来世紀 SHIBUYA』白石晃士監督 明るいディストピアSFで描いた、現在と地続きの近未来【Director’s Interview Vol.166】

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近年の映画/ドラマでは、現代社会で顕在化する「格差」を描くものが急増している。それらは優れた作品が多く、世界の映画祭でも受賞が相次いでいるが、「格差」を描くという性質上、作品のトーンは暗い空気に支配されることがほとんどだ。


そんな格差ドラマに新風を吹き込むのがHuluオリジナル『未来世紀 SHIBUYA』だ。舞台は15年後の2036年、貧富の格差が拡大しスラム街となった渋谷の一角。この町で育ったミツル(⾦⼦⼤地)とカケル(醍醐⻁汰朗)は自ら正義マンと名乗り、動画配信をしながら人々が持ち込むお悩みを解決していくことを決意。様々な依頼を解決していく中、いつしか2人は大きな陰謀に巻き込まれていく…という全6話のシリーズだ。


デジタル技術の急激な進歩が人間社会に与える様々な影響を描いており、コメディとして展開しながらも、そのテーマ性は見ごたえ十分な正統派SFとなっている。監督はフェイクドキュメンタリーで新たな表現を切り開いてきた白石晃士。彼が挑戦したのは、「配信動画」だけでドラマを構築するというまさに現代的な試みだ。この新機軸のドラマはいかに制作されたのか。SF的テーマにこだわりぬいた脚本執筆から、注目の若手俳優とのコラボの内幕まで、全てを語ってもらった。


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心霊ビデオで培った手法を駆使



Q:白石監督といえば、ホラーというイメージですが、今回はご自身のキャリアで初となるSF作品です。まずは本作に参加した経緯をお聞かせください。


白石:『貞子 vs 伽椰子』(16)で仕事をした編集マンの和田剛さんが、制作会社アックスオンの伊藤プロデューサーと知り合いだったんです。それで伊藤プロデューサーにつながって「 Hulu でこういう企画があるんですが、どうですか」とお誘いをもらいました。


Q:監督が参加された時には、作品の骨格はできていたんですか?


白石:頂いた企画書では、近未来を舞台に科学技術の危険な部分に目を向けて、その危うさを訴えるという内容でした。「ドラマの『ブラック・ミラー*』みたいな感じですか? 」、「まあ、そうですね」っていう感じでしたね。打合せを重ねていくうちに、2人組の男の子が主人公で、ユーモアを交えてストーリーを進めていく、という骨格ができていきました。


*:『ブラック・ミラー』:2011年から製作されたイギリスのドラマシリーズ。新たなテクノロジーが社会にもたらす予想外の変化を、風刺を交えて描いた。


Q:本作で観客が目にする映像はすべて配信動画、という体のフェイクドキュメンタリー風ドラマです。そういった手法はやはり白石監督の発案だったのでしょうか?


白石:あまりにも長期間打ち合わせをしていて、どうだったか覚えてないんですが…。(同席するプロデューサーに)俺のアイデアでしたっけ?・・・俺ですね。俺だったみたいです(笑)



Hulu オリジナル「未来世紀SHIBUYA」©HJホールディングス


Q:配信動画の映像でドラマを構成することで、画面にテロップを自然に入れることができるのは、なるほどと思いました。ドラマや映画では説明的な台詞やテロップは嫌われますが、配信動画という設定だからテロップが入るのは自然だし、それによって観客に無理なく物語を理解させることができますね。


白石:YouTubeで人気のある動画は、喋っている言葉を全部テロップにしていることが多いんです。だから最初はセリフに全部テロップをつけてもらいました。でもやはりドラマなので、テロップがうるさくないようしたい。そこからバランスを見て、必要な部分や強調したいところだけテロップを入れていくことにしました。


あとは YouTubeの動画ってだいたい音楽を流しているんですが、それまで同じようにしてしまうと集中して芝居を見てもらうのに邪魔になる。だから効果音は入れましたが、音楽は基本的には使わないことにしました。


Q:白石監督といえば フェイクドキュメンタリーですが、今回はそういった手法がこれまで以上に内容とうまく合致していると感じました。


白石:映像業界で仕事を始めたのは『ほんとにあった!呪いのビデオ』などに代表される心霊ドキュメンタリーでした。2年間ぐらい、いろんな種類の心霊ドキュメンタリーを監督して、テロップの入れ方やどういう風に状況説明をするかといったテクニックは培われましたね。その経験が本当に生きたなと思います。




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