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『THE BATMAN―ザ・バットマン―』マット・リーヴス×大友啓史“同い年”監督スペシャル対談 完全版【Director's Interview Vol.194】
バットマンの登場シーンはデヴィッド・リンチに影響された
大友:マット監督のチャレンジ精神を最初に感じたのは、バットマンの登場シーンです。「いつ現れるのか」とため込んでため込んで、暗闇からふっと現れるバットマン。
あのシーンを観たとき、マット監督の目指すテイストが一瞬にして自分の中に飛び込んできました。これまで多くのバットマン映画がありましたが、「自分が見たかったバットマンはこれだ!」と思える登場シーンでした。
リーヴス:それはすごく嬉しいですね。バットマンの出現には、心理ホラーのような側面があると思っているんです。
あの出現の仕方のインスピレーションになったのは、デヴィッド・リンチ監督です。『ロスト・ハイウェイ』(97)でビル・プルマンが、闇に包まれた廊下から現れるシーンがありますよね。理由はわからないけど、とても怖いし、不穏で、夢の中にいるような異様な感じがする。バットマンの出現もまた、悪夢で見るビジョンのようなものだと考え、それを映像にしたいと思いました。コミックスでもある程度そう描かれてしますし、あの表現を実現するためにものすごく頑張りました。
ブルースにとってバットスーツには、2つのゴールがあります。ひとつはもちろん自分を守るため。では何故、コウモリの形状をしたスーツをまとって現れるのか? それは恐ろしい印象を作り出したいから。夜を徘徊する獣のような存在だと思われたいからです。
だから、大友監督があの出現の仕方に注目してくださったのは僕にとってとても意義深いことです。僕も同じように、ああいう風に現れるバットマンを見たいと思っていたので。
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(c)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c)DC
大友:あぁ、やはり。いまお話に上がったバットスーツも素晴らしかったです。いくつも傷がついていたり改良を加えた跡があって、バットマンが人間であることが衣装から伝わってくる。これらの傷は、バットマンの葛藤の跡でもありますよね。細部までこだわっていて、感動しました。
リーヴス:ありがとうございます。衣装に関しては「完璧ではない」というコンセプトがあり、バットマンの人間性を見せるものにしたいと最初から思っていました。
2年間、バットマンはあのスーツを着て活動しており、戦いを求めて夜な夜な街に向かっている。彼がその間に受けたダメージの数が目に見えるようなものにしたいと考えました。観客が初めて目にするバットスーツには傷や縫った跡があり、自作だということや彼が一匹狼であること、努力や葛藤が理解できる。
スーツに関してはもう一点、バットマンという存在の実用性を考えなければいけませんでした。バットマンの格好をしていては、明るい場所で活動はできません。彼が酒屋やコンビニの前でパトロールをしていたら、ものすごく目立ちますよね。「何やってんだアイツ」となってしまう(笑)。
そのため、パトロール時にはまた違った表現が必要だと気付きました。超有名人であるブルース・ウェインであることもできないし、目立ってしまうバットマンであることもできない。そこでこの流れ者のようなキャラクターを登場させました。