1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『THE BATMAN―ザ・バットマン―』マット・リーヴス×大友啓史“同い年”監督スペシャル対談 完全版【Director's Interview Vol.194】
『THE BATMAN―ザ・バットマン―』マット・リーヴス×大友啓史“同い年”監督スペシャル対談 完全版【Director's Interview Vol.194】

(c)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c)DC

『THE BATMAN―ザ・バットマン―』マット・リーヴス×大友啓史“同い年”監督スペシャル対談 完全版【Director's Interview Vol.194】

PAGES


バットマンが“失敗”する姿に、彼の強さがある



大友:今回のバットマンはまさに、感情がアクションの起因となるわけですね。


リーヴス:その通りです。冒頭のバイオレンスの表現については、現れたバットマンが「噴火」するようにしたいと伝えました。


グッドフェローズ』(90)でカレン(ロレイン・ブラッコ)が隣人に襲われた後、ヘンリー(レイ・リオッタ)が激高して通りを渡り、「何の用だ?」と言わんばかりの隣人をリボルバーで滅多打ちするシーンがありますよね。それを観ている僕らはショックを受けます。不正を正したからだけではなく、隣人がやったことに対して、ただやり返すというレベルを遥かに超えた、憤怒を感じるからです。


隣人は、ヘンリーの中にある“何か”を解き放ってしまった。その瞬間までは観客にとって最も身近な存在だった主人公が、突然爆発して豹変し、僕らの印象もまるで変わってしまうのです。そして観客は、彼の中に存在する危険なものに気付く。バットマンにはそれと同じぐらいの危険性を持たせたいと思いました。理性では説明できない、とてもパーソナルで、熱い“何か”です。本作のアクションはすべて、その感情に起因していなければいけないと考えました。



『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(c)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c)DC


大友:非常にわかります。登場シーンのアクションから、ビシビシと伝わってきました。


リーヴス:バットマンが闇の中から現れてごろつきと戦うシーンも、バットモービルのカー・チェイスも、彼の執念や怒りの延長線上にあるものでなければならなかったのです。そしてどの戦いでも、ブルースは自分の憤怒をぶつけるだけではなく、たくさんの暴力も受けているし、時には怪我もする。彼は常に必死で、ギリギリのところで何とかやっている状態です。


象徴的なのは、ウィング・スーツで飛ぶシーンです。ブルースはうまく着地できず、地面に叩きつけられて苦しみますよね。まだ慣れていないから、成功できない。ただ、彼はあの痛みを耐え抜く。それこそがブルースのただひとつのスーパー・パワーです。この使命のためには何だって耐えてやるという、彼の強い意志ですね。ブルースが自殺行為に近いバットマンの活動に身を投じるのは、それだけ自分の人生に意味を見出したいと思っているから。だからこそ、この映画では彼がどれだけ戦えるのかを見せるだけではなく、どこまでダメージを受けられるのか、というのも見せたかったんです。


大友:今日は貴重なお話の数々、ありがとうございました。とても楽しかったです!


リーヴス:こちらこそ! 大友監督の視点はとても興味深くてありがたかったです。監督の作品もぜひ拝見させてください。




『THE BATMAN-ザ・バットマン-』マット・リーヴス×大友啓史インタビュー




『THE BATMAN-ザ・バットマン-』を今すぐ予約する↓







マット・リーヴス

『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)で1億7,500万ドル以上の世界興収をあげ、スウェーデンのホラー映画『ぼくのエリ 200歳の少女』(08)のリメイクとしてコディ・スミット=マクフィー、クロエ・グレース・モレッツ出演の『モールス』(10)の監督を務める、その後、『猿の惑星』三部作(11,14,17)のうち、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(出演:アンディ・サーキス、ジェイソン・クラーク、ケリー・ラッセル)の監督、最終章『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(出演:アンディ・サーキス、ウディ・ハレルソン、スティーブ・ザーン)の脚本・監督を務め高い評価を得る。TVでは、人気シリーズ「フェリシティの青春」(98~02)のパイロット版の共同企画・監督、制作パートナーで共同企画のJ・J・エイブラムスとともに同シリーズの製作総指揮、さらに現在、21年9月にプレミア放送されたNBC放送の「Ordinary Joe」(21~)で企画・製作総指揮を務めている。また、J・J・エイブラムスと再びチームを組み、23年HBO Max配信予定のバットマンの新アニメシリーズ「Batman: Caped Crusader」に取り組んでいる。現在、自身の製作会社シックスス&アイダホのもとで、Netflixの『Lift』(出演:ケビン・ハート)とTVシリーズ「Twelve Scarves」を製作中。このほか、製作を担当した作品に、『マザー/アンドロイド』(21・未)、製作総指揮を務めた作品に、「10 クローバーフィールド・レーン」(16)、「クローバーフィールド・パラドックス」(18)、「パッセージ」(19)の全10エピソード、Netflixの「Away -遠く離れて-」(20)の全10エピソード、「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」(20~)の全8エピソードなどがある。





大友啓史

1966年生まれ。岩手県出身。慶應義塾大学法学部卒業。1990年にNHKに入局し、連続テレビ小説『ちゅらさん』シリーズ(01~04)、『ハゲタカ』(07)、『白洲次郎』(09)、大河ドラマ『龍馬伝』(10)などを演出。イタリア賞始め国内外の賞を多数受賞する。2009年、『ハゲタカ』で映画監督デビュー。2011年5月に独立し、『るろうに剣心』(12)、『プラチナデータ』(13)、『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14)の2部作を手がけ、その後も、『秘密 THE TOP SECRET』『ミュージアム』(16)、『3月のライオン 前編/後編』(17)、『億男』(18)、『影裏』(20)と話題作を次々と世に送り出す。そして、2021年には大人気シリーズの完結編となる『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』が2部作連続で劇場公開され、2021年最大級のヒット作となる。『るろうに剣心』シリーズ全5作の累計興行収入は193億円を超え、日本を代表するシリーズ作品となっている。




取材・文:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema




『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

大ヒット上映中 

配給:ワーナー・ブラザース映画

(c)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c)DC

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『THE BATMAN―ザ・バットマン―』マット・リーヴス×大友啓史“同い年”監督スペシャル対談 完全版【Director's Interview Vol.194】