観る側との信頼関係が、説得力を生む
Q:今回は気心の知れたメンバーに、新たなメンバーが融合した形ですね。
荒木:そうですね。今回はよりリアルな生っぽい芝居を中心に置きたいなと思い、志尊淳さん、りりあ。さん、広瀬アリスさんといった方々にお願いしました。アニメーションをやったことがない方だと最初は心配でしたが、全くの杞憂でしたね。リアルな、本物の気持ちを表現できる方々でした。きっと、お客さんも前のめりに観てくれると思います。
Q:説得力、非常に大切ですね。フィクションという大いなる嘘を成立させるための、感情面での嘘のなさといいますか。
荒木:これは良く思うことなのですが、観ているときは、皆さんが感想をアウトプットする文章の何十倍も色々なことを想っていて、作り手とお客さんは大いに会話をしているんですよね。そしてその際、同時にお客さんは作っている奴が誠実かどうかも見ている。
俺自身も「この作り手は信用していい奴か」と考えながら作品を観ているし、作る側としてはそこに対してちゃんとサインを送って向こうが受け取ってくれたら成功といえる。単にリアリティだけだと現実の再現ですが、要は信用してくれるかどうかの話だと思うんです。両者の間に信頼関係があれば、そこに説得力が生まれる。
『バブル』(C)2022「バブル」製作委員会
澤野:僕も、作るものとの向き合い方は重要だと思います。適当にやったものってどこかに現れていると思うし、結局バレる。だいぶ前の話ですが、荒木さんみたいに毎回やりがいを感じる作品もあれば、スタッフさんと意見が合わなくて一瞬「これどうしようかな」とネガティブになる作品もありました。でもそのときに、「これはあくまでこちら側のことでお客さんには関係ない」と感じたんです。
こっちがやっていてモチベーションが上がらないというのは単なる言い訳で、結局は作品を通して観るわけだから、自分が誠実に「力を入れて作ったんです」と言えるものを作らないと見透かされる。それに、他の制作サイドが観る可能性も大いにあるわけだから、ちゃんと作品と向き合って音楽を作らないといけないんだ、というのはそのときにすごく感じました。
荒木:いまのお話、仕事論としてズシンときました。一生、手抜きなんてできない(笑)。
澤野:いやぁ、本当にそうですね(笑)。
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監督:荒木哲郎
1976年生まれ、埼玉県出身。アニメーション監督、演出家 大学卒業後、マッドハウスに入社。TVアニメ「ギャラクシーエンジェル」(第4期/04)の演出で注目を集め、シリーズ初監督は「DEATH NOTE」(06〜07)。主な監督作品に「ギルティクラウン」(11)、「進撃の巨人」(13)、「甲鉄城のカバネリ」(16)など。2022年、満を持して監督最新作『バブル』が公開となる。
音楽:澤野弘之
1980年生まれ、東京都出身。作曲家 映像での音楽活動を中心に、その他にもアーティストへの楽曲提供・編曲など幅広く活動している。ボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)が2014年春より始動。主な作品は「機動戦士ガンダムUC」(10)、「ギルティクラウン」(11)、「キルラキル」「進撃の巨人」(共に13)及び劇場版シリーズ、「甲鉄城のカバネリ」(16)及び劇場版シリーズ、『機動戦士ガンダムNT』(18)、『プロメア』(19)、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(21)など。TVドラマでは「医龍 Team Medical Dragon」(06)ほか多数。
取材・文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
『バブル』
劇場版:5月13日(金)全国公開
NETFLIX版:全世界配信中
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2022「バブル」製作委員会