J・J・エイブラムスがスピルバーグにオマージュを捧げて撮った映画『SUPER8』(11)。小中和哉監督が成蹊高校映画研究部時代の自伝的エピソードを映画化した『Single8』(23)。この映画の共通点が分かる方はどれほどいるだろうか。答えはそのタイトルの中にある。どちらも8mmフィルムの名前がそのままタイトルになっているのだ。70年代後半を舞台に、映画作りに熱中する少年少女たちが描かれているのも共通している。
今回は、成蹊高校映画研究部出身の小中和哉監督、利重剛氏、手塚眞氏の3氏にインタビューを実施。本作『Single8』のモデルともなった70年代後半の高校生たちは、映画作りの何に魅せられていたのか?当時の彼らを突き動かした『スター・ウォーズ』(77 ※日本公開は78)の衝撃とは? 話を伺った。
『Single8』あらすじ
1978 年夏、高校生の広志は日本で公開されたばかりの『スター・ウォーズ』を観て大興奮!!自分も巨大な宇宙船を撮りたいと8ミリカメラを手にする。映画作りへの熱い想いはいつしかクラスメイトの喜男、佐々木、夏美たちを巻込み、文化祭の出し物で監督作品が上映されることに。こうして忘れられない夏休みの撮影が始まった――。
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登場人物のモデルたち
Q:私も学生時代に8mm映画を作った経験がありますが、本作を観ると何故か照れ臭く、当時を思い出しました。皆さんは完成した作品を観ていかがでしたか?
利重:俺も同じ感覚がありました。この映画には参加してないのに一緒に作った感じがする(笑)。
小中:モデルになっている人たちは客観的に観られないと思いますね。「勝手に作り変えやがったな」と色々な思いがあったんじゃないかな(笑)。
手塚:当時はもっと混乱してたし、誰も慣れていないから現場はひどかったよね(笑)。それが観やすくまとまってました。なるほどこういう感じにしたのかと。
小中:言えないような話はもっとたくさんありますけどね…(笑)。
『Single8』(C)『Single8』製作委員会
Q:映画に出てくる、広志、喜男、佐々木の3名はそれぞれ皆さんがモデルになっているのでしょうか。
小中:佐々木は何人かを合体して作ったキャラクターで、そのうちの一人が利重剛です。高一のときに撮った『TURN POINT 10:40』(79)という映画があって、その特技監督でクレジットされてるのが利重(当時のクレジットは笹平剛)。風呂場でドライアイスを焚いて宇宙船を操ってくれて、一緒に家に泊まり込んでやってました。
利重:泊まり込んでたよねぇ。でも何故クレジットが特技監督だったんだろう?
小中:実際はそんなに区分はないんだけどね。撮影監督は別の人間がいたし、順番に決めていくと自然とそうなった。
Q:手塚さんをモデルにしたキャラクターはいますか。
小中:映画にはカメラ屋のお兄ちゃんが出てきますが、彼も何人かを合体させて作ったキャラクターで、手塚さんはその内の一人です。映研に入部したときに、「まずはお手並み拝見で一本フィルムを撮ってごらん」と言ってくれたのが手塚さん。いろいろ教えてくれる先輩というポジションでした。
Q:劇中で夏美が広志に写真を渡すシーンは甘酸っぱくてとても良かったです。スチールとムービーとお互いにフィルムで撮っている。素敵なシーンでしたがこれも実話ですか。
小中:写真を渡すというのは嘘ですね(笑)。でも実際に修学旅行で映研同期の山本奈津子さんとお互いに撮り合ったことがあるんです。僕が8mmで撮っていて、彼女も8mmでこっちを撮っている。お互いそれに気づいて撮り続けているんだけど、ヘタレだからあまりシャッターを長く押し続けられなくて終わってる(笑)。その記憶があったので脚本に入れましたが、当時のフィルムを見直すとちゃんと映ってましたね。また当時は東横線でよく横浜ロケに行ってましたが、隣に座った山本さんが肩にもたれかかって来たというのは実話です(笑)。その辺のいくつかの真実をまぶしながら、都合良く恋愛要素を高めて脚色しています。