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『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』16人のヴィランに見る、史上最もピュアなジェームズ・ガン

(C) 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』16人のヴィランに見る、史上最もピュアなジェームズ・ガン

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ピースメイカー/ポルカドットマン



 ジェームズ・ガンの“群像劇作家”としての才能のひとつは、バランス感覚に長けた登場人物の配置にある。脚本家としての力量が活きた『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)もそうだったが、キャラクターの身体的・精神的なパワーバランスが巧みなのだ。


 ジョン・シナ演じるピースメイカーは、ブラッドスポートと対をなす“強者”だ。二人はともにスーサイド・スクワッドのリーダー的役割を担い、優れた戦闘能力を誇る。ただし、ブラッドスポートに人情ゆえの脆さがある一方で、ピースメイカーのメンタリティはとことん強靭だ。名前の通り「平和主義者」である彼は、平和のためなら女子供も容赦なく殺す、見境のない正義感の持ち主である。


 もともとDCコミックスではなく、チャールトン・コミックスの「ファイティン・ファイブ」誌に登場した初代ピースメイカーは、本名をクリストファー・スミスという。正義のためなら手段を選ばないという設定は、コミックからそのまま活かされたもの。1980年代にDCに権利を購入され、DCユニバースのキャラクターとなった。

 

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(C) 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics


 実は当初、ガンはピースメイカー役に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのドラックス役で知られるデイヴ・バウティスタを起用しようとしていたが、バウティスタは『アーミー・オブ・ザ・デッド』(21)を選び、本作への出演を断念。そこで白羽の矢が立ったのがシナだったのだが、劇中で見せるイドリスとの好対照は絶妙だ。ガンもピースメイカーを相当気に入ったのだろう、スピンオフドラマ「ピースメイカー(原題)」では自ら脚本・監督を務めている(2022年初頭に米国配信予定)。


 精神的に強すぎるピースメーカーがいる一方で、スーサイド・スクワッドには「最強の陰キャラ」もいる。『アントマン』シリーズのデヴィッド・ダストマルチャン演じる、ポルカドットマン/アブナー・クリルは、コミックファンのデヴィッドでさえ「誰なのかわからなかった」という知名度の低いキャラクターだ。しかし、彼が放つ水玉を、うっかり身体で受けてしまうと……?


 本作にポルカドットマンを登場させた理由について、ガン監督は「Googleで『DC史上一番バカなキャラクター』と検索したら出てきたから」とキツいジョークを披露している。しかし、これはいかにもガン監督らしい照れ隠しだ。全身に水玉が吹き出してくるという身体的症状、家族関係にトラウマを抱える心理的症状は、これまた多くのガン作品が描いてきた、人間のコンプレックスと葛藤を象徴するもの。ひたすらにネガティブなクリルの物語には、ガンらしい要素がたっぷりと詰まっている。



『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(C) 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics


 演じるデヴィッドは、同じくDC原作のクリストファー・ノーラン監督作品『ダークナイト』(08)のシフ役で映画デビューした人物。それから13年を経て、同じDC映画で主要キャストに起用されたことを、デヴィッド自身も非常に感慨深く感じていたそうだ。





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