©1982 Guradian Trust Company.All Rights Reserved.
『ビデオドローム』あなたの“現実”は本当に“現実”? 鬼才クローネンバーグ、40年前の挑発がここに甦る!
ポルノグラフィーを超え、思索的な映像体験へ
ビジュアル面だけでなく、クローネンバーグの思想や哲学をダイレクトに盛り込んだ点でも『ビデオドローム』は意欲的な作品だ。「テレビの画面は心の目の網膜」とは、ビデオドロームの開発者のひとりであるオブリビアン教授の弁。人は目で見たものを現実として受け止める。そういう意味では、テレビも見る人間の“現実”だ。そこに映ったものは、演技かノンフィクションかは視聴者に委ねられる。すなわち、かなり不確かなものだ。教授はさらに語る「結局、現実など認識の問題に過ぎないのだ」と。
同じことは、マックスの見る“現実”にも言えるだろう。テレビ画面にキスしてその中に飲み込まれるのも、腹の中に生じた割れ目に腕を突っ込むのも、すべては彼の妄想だ。しかし、たとえ狂ってしまったとしてもマックスが見ているのは彼の“現実”。そしてそれは他人の目を通すと、狂ってしまった男かいる、という“現実”になる。オブリビアン教授の言う認識の問題とは、そういうことだ。
『ビデオドローム』©1982 Guradian Trust Company.All Rights Reserved.
ビジュアル的にもテーマ的にも、『ビデオドローム』はクローネンバーグのアーティスティックなビジョンをダイレクトに反映する意欲作となるはずだった。ところが、そこに検閲という問題が立ちはだかる。これ以前の『ザ・ブルード/怒りのメタファ―』でも、検閲によりカットされたシーンがあったのは、同作記事でも記した。このときはカナダのトロント検閲局が作品にメスを入れてきたのだが、『ビデオドローム』の場合は事情が異なる。先にも述べたように、この映画はハリウッドの大手スタジオ、ユニバーサルが出資し、全米配給する作品なのだ。
積年の恨みを晴らす、バイオレンス強度マシマシの4Kバージョン