『戦場のメリークリスマス』(4K修復版)『愛のコリーダ』(修復版)の大規模上映を実現 大島渚プロダクション・大島新監督インタビュー【CINEMORE ACADEMY Vol.16】
凸凹した傑作『戦場のメリークリスマス』
Q:『愛のコリーダ』は美術や撮影が素晴らしく、すごく端正な作りの映画です。それに対して『戦メリ』は、みんな大好きで、魅力的な作品なんですが、映画として端正かと言うと …。
大島:違いますよね。ものすごく凸凹している映画だと思います。
Q:だからダメかというと、そんなことはなく、繰り返し見てしまう。不思議な求心力のある映画です。
大島:年齢を重ねてから見ると、作品から受ける感覚がまた違いませんか?
Q:私は10代で見たときは、ビートたけしさん演じるハラ軍曹と、ロレンスのドラマをメインに見ていました。でも、今回スクリーンで見直したら、ヨノイ(坂本龍一)とのセリアズ(デヴィッド・ボウイ)の関係性に魅せられてしまいました。
大島:私もやっぱり『戦メリ』が好きで、毎回見るたびに胸を打たれるんです。でも何に胸を打たれいるのか、よく分からない。言語化しにくい、というのがいつもの感想です。
見る時々によって、感動するシーンは違うんですが、特に今回見た時は、セリアズが土の中に埋められて、捕虜たちが彼のために賛美歌を歌うシーン。あそこは本当に良かったと思いました。でも坂本さんの演技は何度見てもやっぱり「大丈夫か?」と思ってしまいます(笑)。英語のセリフの方がうまいんですよね。
『戦場のメリークリスマス』(4K修復版)©大島渚プロダクション
Q:坂本さんは演技経験がほとんどなかったそうですが、存在感が凄いです。ただ、あのアイシャドウというか…メイクが気になります。メイクの意図は大島監督に聞いたことはありますか?
大島:ないですよ(笑)。本当に謎ですよね。でも坂本龍一さんやビートたけしさんの現在の映画界における存在感を考えると、『戦メリ』のキャスティングは奇跡的でしたね。だって元々ハラ軍曹が緒形拳さんで、ヨノイは滝田栄さんの予定でしたから。全然違う映画ですよね。