『戦場のメリークリスマス』(4K修復版)『愛のコリーダ』(修復版)の大規模上映を実現 大島渚プロダクション・大島新監督インタビュー【CINEMORE ACADEMY Vol.16】
演技の拙さをフォローするために生まれた名曲
Q:大島監督はなぜ坂本龍一さんをキャスティングしたのでしょうか?
大島:当時いろんなミュージシャンを撮った写真集があったのかな。坂本さん一人じゃなくて。それを父が見て、なんとなく佇まいみたいなものが気に入った、という話を聞いたことがありますね。
Q:そこは人を見抜くセンスですよね。ただ存在感は凄いけど、坂本さんに演技はできなかった。大島監督は現場ではどう思っていたんでしょうか。
大島:これは評論家の樋口尚文さんに聞いたんですが、デヴィッド・ボウイとキスするシーンの前に坂本さんが捕虜たちに、「貴様らは病気じゃない!」って怒るシーンがある。その時の坂本さんの演技を、父が編集の時に、おもしろおかしく口真似していたらしいですよ。「貴様らは病気じゃない!」とかって。ひどいと思いません?
「彼は面白いよな、アドリブでやってくれたんだよ」って。 そんなこと、するんだったら撮り直せばいいのにって(笑)。坂本さんも気の毒です。でも坂本さんも、ラッシュを見て、自分の演技が拙いから、なんとか曲でもりあげて、誤魔化そうと必死だったらしいですね。
『戦場のメリークリスマス』(4K修復版)©大島渚プロダクション
Q:それであの名曲「Merry Christmas Mr.Lawrence」が生まれたわけですね!
大島:そうですよ。本当に名曲ですよね。
Q:坂本龍一さんは、『戦場のメリークリスマス』があったからこそ『ラストエンペラー』(87)でアカデミー作曲賞を受賞し、たけしさんも映画に目覚めて、監督として世界的な存在になりました。劇中に「種をまく」という台詞がありましたが、作品自体が種をまいていますよね。
大島:私も大島プロの著作権管理をしているので実感しますが、『戦メリ』の影響力はちょっと他の作品とは桁が違うんです。単に一本の映画というだけでなく、その広がり方とか、いろんな意味で特別な作品だと思います。