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『THE BATMAN―ザ・バットマン―』マット・リーヴス×大友啓史“同い年”監督スペシャル対談 完全版【Director's Interview Vol.194】

(c)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c)DC

『THE BATMAN―ザ・バットマン―』マット・リーヴス×大友啓史“同い年”監督スペシャル対談 完全版【Director's Interview Vol.194】

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モキュメンタリー形式のパニック映画として話題を集めた『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)、『猿の惑星』を“新生”した『猿の惑星: 新世紀』(14)『猿の惑星: 聖戦記』(17)など、作品を発表するたびに新たな驚きをもたらしてきたマット・リーヴス監督。彼がかのバットマン映画に挑むと聞いたとき、胸を躍らせた映画ファンは少なくないだろう。


日本でも大ヒット公開中の『THE BATMAN―ザ・バットマン―』は、実に彼らしいサプライズ満載ながら、硬派でハイ・クオリティな一作。バットマンの活動を始めて2年目のブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)が、ゴッサム・シティを恐怖に陥れる連続殺人犯リドラー(ポール・ダノ)を追う。


本作にいち早く反応したのが、『るろうに剣心』シリーズで革命を起こした大友啓史監督。奇しくもリーヴス監督と同い年(1966年生まれ)である大友監督は、アメリカン・ニューシネマに代表される70年代のハリウッド映画のにおいを感じ取ったという。


そしてこのたび、両監督のスペシャル対談が実現。大友監督ならではの着眼点で引き出されていくリーヴス監督の創意工夫の数々を、完全版の大ボリュームでお届けする。


Index


同い年の両監督を作ったアメリカン・ニューシネマ



大友:実はマット監督と僕は同い年で、誕生日も2週間違いなんです。『THE BATMAN―ザ・バットマン―』を拝見して、僕たちは同じような映画を観て、それらに憧れて育ってきたんじゃないかと感じました。


リーヴス:本当ですか! 大友監督はどんな作品をご覧になってきたのですか?


大友:僕が観てきて、かつ本作に重ねたのは『ゴッドファーザー』(72)や『タクシー・ドライバー』(76)といったアメリカン・ニューシネマです。テレビを意識して作ったフラットな照明というより、思いきって陰影で勝負する点、勝者に感情をゆだねず、敗者の気持ちに共感していく点など……。


さらに、登場人物の内面の複雑さ。わかりやすさを前提とするヒーロー映画とは真逆の「人間は白か黒ではない」という思考で人間ドラマを描くという意志が、本作からはすごく伝わってきました。


リーヴス:『モールス』(10)や『猿の惑星』など、ここ最近の監督作はすべてジャンル映画なのですが、僕がキャリア初期に目指していた映画はまさに大友監督が挙げられた70年代の作品の影響を受けたものでした。パーソナルな物語で、人間の複雑さを描いて……。当初は、いま手掛けているような映画を自分が作るとは想像もしていませんでした(笑)。


ただ僕は、『THE BATMAN―ザ・バットマン―』のような超大作であっても、パーソナルな事柄を描く方法論はあるはずだと以前から考えていました。むしろバットマンという題材は、複雑な人間性や個人の内面を描くのにぴったりだとさえ思います。今回声をかけていただいたのは、本当に幸運でした。


『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(c)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c)DC


大友:とはいえ、バットマンのような歴史あるシリーズに挑むにあたって、とてつもないプレッシャーがあったのではないでしょうか。どのようにして重圧に打ち勝ったのか、同じ作り手として伺いたいです。


リーヴス:やはりある程度の、合理的なレベルの恐怖心を持って臨むことは必要だと思うんです。バットマンに80年もの歴史があるのはそれだけ物語がパワフルだからですし、これまでもすばらしいバットマン映画が作られてきています。だから、感じるのは同じ恐怖心でも、良き恐怖心でした。


もし今までと同じようなことをやったら失敗になるし、野心的なところを見せられなかったら、それもやはり失敗です。他の監督が野心を掲げて見事に成功しているわけですから、そういった意味では最高の挑戦ですよね。


既にすばらしいバットマン映画が存在するなか、どうやったら他とは違うものができるのか? すばらしい映画にするために何ができるのか? ある程度の昂揚感と健康的なレベルの恐怖心がないまぜになった感じでしたね。





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