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アルフレッド・ヒッチコック監督作品おすすめ20選! サスペンスの神様が手がけた珠玉の傑作群

(c)2009 Turner Entertainment Co. and Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved. (c)Photofest / Getty Images

アルフレッド・ヒッチコック監督作品おすすめ20選! サスペンスの神様が手がけた珠玉の傑作群

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アルフレッド・ヒッチコックは、「ある監督は、人生の断面を映画に撮る。私はケーキの断面を映画に撮るのだ」という名言を残している。彼は高尚な人間ドラマには興味を示さず、徹底的に娯楽作品を撮り続けてきた。全53本に及ぶフィルモグラフィーのほとんどが、エンタメの王道を行くサスペンス映画。そのうち、筆者の独断と偏見で選んだ珠玉の20本を紹介しよう。


Index

アルフレッド・ヒッチコック監督作品 おすすめ20選!1920年代〜40年代


1.『恐喝』(29)

2.『暗殺者の家』(34)

3.『三十九夜』(35)

4.『バルカン超特急』(38)

5.『レベッカ』(40)

6.『海外特派員』(40)

7.『逃走迷路』(42)

8.『疑惑の影』(43)

9.『白い恐怖』(45)

10.『汚名』(46)

11.『ロープ』(48)


アルフレッド・ヒッチコック監督作品 おすすめ20選!1950年代〜70年代


12.『見知らぬ乗客』(51)

13.『裏窓』(54)

14.『知りすぎていた男』(56)

15.『めまい』(58)

16.『北北西に進路を取れ』(59)

17.『サイコ』(60)

18.『鳥』(63)

19.『フレンジー』(72)

20.『ファミリー・プロット』(76)


アルフレッド・ヒッチコック監督作品 おすすめ20選!1920年代〜40年代



1.『恐喝』(29)サイレント版76分/トーキー版85分


『ゆすり』、『ヒッチコックのゆすり』と表記されることもアリ。正当防衛の殺人を犯した女性の苦悩を描く、ヒッチコック最初期のサスペンス映画。1927年に公開された『ジャズ・シンガー』を皮切りに、映画界はサイレントからトーキーへと移行していた。本作も元々はサイレントとして撮影していたが、いくつかのシーンを撮り直してイギリス初のトーキー映画として公開されることに。カーテン越しの殺人など、サイレント映画の技法を感じさせるシーンもチラホラ。




2.『暗殺者の家』(34)75分


『下宿人』(27)、『恐喝』(29)、『殺人!』(30)と、これまでも犯罪映画を撮り続けてきたヒッチコックだったが、サスペンス映画としてのスタイルを確立したのは本作からだろう。国際的陰謀に巻き込まれてしまった夫婦の顛末を、緊迫感のあるタッチで描いている。暗殺団のボスを演じているのは、フリッツ・ラング監督『M』(31)のシリアル・キラー役で知られるピーター・ローレ。その強烈な存在感は、ヒッチコック映画のなかでも異彩を放っている。




3.『三十九夜』(35)88分


原作は、ヒッチコックお気に入りの小説家だったジョン・バカンの『三十九階段(The 39 Steps)』。殺人犯に間違われた男が身の潔白を証明するために奮闘する、ヒッチコックのお家芸とも言える<巻き込まれ型サスペンス>。オープニングとエンディングの舞台が両方ともミュージックホールという、サンドイッチ型構造なのが巧み。超人的な記憶力の持ち主ミスター・メモリーは、忘れ難い印象を残すキャラクターの一人だろう。


あわせて読みたい:ヒッチコック、イギリス時代の傑作スパイ・サスペンス『三十九夜』に織り込まれた高密度なドラマ性




4.『バルカン超特急』(38)97分


『フォーガットン』(04)、『フライトプラン』(05)、『アンノウン』(11)など、身近な人間が忽然と姿をくらましてしまう「人間消失系映画」のオリジン的金字塔。特急列車から老婦人が行方不明となるが、乗客は皆「そんな女性は見たことがない」の一点張り。謎に満ちた失踪事件を、マーガレット・ロックウッドとマイケル・レッドグレイヴ演じるコンビが解き明かしていく。映画評論家の水野晴郎は、この作品にインスパイアを受けて『シベリア超特急』シリーズを自ら監督・主演した。


あわせて読みたい:『バルカン超特急』正統派サスペンスにして、ユーモアたっぷりのロマンチック・コメディ ※注!ネタバレ含みます。




5.『レベッカ』(40)130分


プロデューサーのデヴィッド・O・セルズニックに請われて渡米したヒッチコックの、記念すべきハリウッド進出第1作。イギリスの大富豪と結婚したヒロインが、死んだはずの前妻レベッカの幻影に悩まされるゴシック・ロマン。彼のフィルモグラフィーで唯一のアカデミー作品賞受賞作だが、後年ヒッチコックは「あれはセルズニックに与えられた賞だ」と語っている。監督賞は合計5度ノミネートされたものの、結局受賞することは叶わなかった。2020年には、リリー・ジェームズとアーミー・ハマー主演でリメイクされている。




6.『海外特派員』(40)120分


文芸的な香りが際立っていたゴシック・ロマン『レベッカ』から、ヒッチコック得意のスパイ・サスペンスへと一気に方向転換を図った、ハリウッド進出第2弾。風雲急を告げる第二次世界大戦直前のヨーロッパを舞台に、大物政治家暗殺事件を追求するアメリカ人新聞記者の姿を描く。雨が降りしきるなか、一面にひしめく傘に紛れて実行される暗殺シーンは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『マイノリティ・リポート』(02)でオマージュが捧げられている。


あわせて読みたい:アルフレッド・ヒッチコック、ハリウッド進出第二弾『海外特派員』の尋常ではない面白さ




7.『逃走迷路』(42)109分


テロリストの濡れ衣を着せられたバリー(ロバート・カミングス)が、パット(プリシラ・レイン)と一緒にアメリカを縦断する逃走劇。ヒッチコックは「アイデアはたっぷりあったけれども、きちんと整理されずにバラバラに詰め込まれた感じ」と反省の弁を述べつつ、「しゃれたタッチでユーモアのある作品」と自画自賛。自由の女神像を舞台にしたクライマックス・シーンは、ヒッチコック映画の中でもハイライトの一つ。原題はフランス語で破壊活動を表す「Saboteur」なのだが、1936年に発表された映画『サボタージュ』の原題も英語で同じ意味の「Sabotage」だったりして、だいぶ紛らわしい。


あわせて読みたい:『逃走迷路』映画を貫く、自由と民主主義の精神 ※注!ネタバレ含みます




8.『疑惑の影』(43)108分


「大好きなチャーリー叔父さんは、連続殺人犯なのではないか?」と疑惑を募らせる姪のチャーリー。カリフォルニアの田舎町サンタ・ローザを舞台に、2人の“チャーリー”が壮絶な心理戦を繰り広げる。『第三の男』(49)では、オーソン・ウェルズの圧倒的存在感に押されっぱなしのジョゼフ・コットンだったが、今作ではミステリアスなチャーリー叔父さんを魅力たっぷりに怪演。姪のチャーリーを演じるテレサ・ライトの、凛とした美しさも印象に残る。




9.『白い恐怖』(45)111分


『サイコ』(60)や『マーニー』(64)など、ヒッチコックにはキャラクターの異常心理を精神分析的に扱った作品が少なくないが、本作もその系譜に連なるニューロティック系サスペンス。「縞模様を見ると発作を起こす」という難病を持つ“彼”ことグレゴリー・ペックの記憶を辿っていくことで、封印されていた過去が明るみになっていく。現実と非現実が混ざり合ったかのような悪夢的イメージを創り出したのは、シュルレアリスムの代表的画家サルバドール・ダリ。




10.『汚名』(46)101分


伝記作家ドナルド・スポット曰く、「46歳にして初めて本格的なラブストーリーに挑んだ作品」。FBIの男(ケイリー・グラント)を深く愛しつつも、スパイとして別の男と結婚することになったアリシア(イングリッド・バーグマン)の葛藤が、観る者の胸を打つ。公開当時は「キスは1回につき3秒以内」という謎ルールがあったため、「口づけを交わす」→「すぐ唇を離す」→「また口づけを交わす」を繰り返す、2分以上に及ぶ<伝説のキスシーン>が生み出された。いや、逆にエロティックなんですけど。


あわせて読みたい:『汚名』トリュフォーが最も愛するヒッチコック作品である理由とは?




11.『ロープ』(48)80分


ニーチェの超人思想に感化された二人の大学生が、完全犯罪を遂行する能力を誇示するために少年を殺害した「レオポルドとローブ事件」。1924年に実際に起きた殺人事件をベースに、大学教授(ジェームズ・スチュワート)の推理によって犯罪が暴かれていくまでをワンシーン・ワンカットで映像化してみせた、ヒッチコック最大の実験作。床全体にカメラが動くコースを描いたり、家具に滑車をつけて移動できるようにしたり、細部に至るまで綿密な撮影プランが張り巡らされている。


あわせて読みたい:『ロープ』ワンシーン・ワンカットによって発揮される、ヒッチコックの超絶技巧




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