2020.10.17
映画館に行く喜びを、思い出させてくれる1本
本稿の執筆段階は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の公開翌日で、まだ初週の興行収入は発表前のタイミングだが、まず間違いなく特大ヒットを記録することだろう。しかし、原作やTVアニメ、今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のクオリティを目の当たりにした身としては、それも当然のことのように感じる。
筆者は公開初日のレイトショーで本作を観賞したが、上映中の飲食がある程度制限され、マスクの着用が義務付けられた環境下での上映とはいえ、ここまで観客が静かに、それこそ2時間を通して“全集中”して、画面を食い入るように見つめている時間というのはなかなか経験したことがなく、改めて『鬼滅の刃』の凄さに感じ入った次第である。
興味深いのは、本作がTVアニメ版の“続き”を描いているということ。『名探偵コナン』や『ONE PIECE』のように、原作ないしTVアニメ版とのリンクはあれど、独立した物語が展開するのではなく、原作を忠実にアニメ化したものとなる。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
ちなみに、チュートリアル的な「『鬼滅の刃』とは?」の映像は挿入されず、ワンクッションはあれど、ほぼTVアニメの最終回からそのまま始まる。つまり、原作ないし一見さんにはややハードルの高い構成になっているのだが、その逆境すらも、難なく超えていくことだろう。
それは作品自体の盛り上がりや、原作者の読者数、TVアニメ版を観ている層が多いこともあるし、今後のアニメ版を追いかけていくためには、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を観なければならない、という状況等々もあるが、やはり単体の映画作品として「面白く、最高品質である」ことに尽きるような気もしている。
「映画館で作品を観る」という楽しみが、奪われてしまった2020年。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』には、劇場観賞の喜びを再び思い出させてくれる“輝き”と、困難な時代にくじけず、生きていくための“活力”が、無限に満ちている。
そう、本作は、我々に呼びかけるのだ。「心を燃やせ」と。
文: SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を今すぐ予約する↓
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』大ヒット公開中!
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable