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『戦場のメリークリスマス』大島渚×デヴィッド・ボウイ×ビートたけし×坂本龍一 異色の戦争映画が実現するまでの軌跡 前編

©大島渚プロダクション

『戦場のメリークリスマス』大島渚×デヴィッド・ボウイ×ビートたけし×坂本龍一 異色の戦争映画が実現するまでの軌跡 前編

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幻の大島渚映画をめぐる夜と霧



 1979年5月17日、所用で京都を訪れた大島に、東映京都撮影所のプロデューサー、日下部五朗と佐藤雅夫が面会を求めた。日下部は進行主任だった若き日に、大島が東映京都撮影所で撮った『天草四郎時貞』に付いており、旧知の仲だった。佐藤は、笠原和夫が『あゝ決戦航空隊』の監督に大島の起用を提案した際、唯一賛成した東映のプロデューサーでもある。彼らは大島に10月27日公開の東映映画『日本の黒幕』を監督しないかと持ちかけた。その申し出に、意外にも大島は乗った。企画自体が以前オファーされた『やくざ戦争 日本の首領』よりも面白く感じたことと、〈ケツカッチンの映画〉だったからである。


 つまりは、まだ脚本も完成していないにもかかわらず、5か月後の公開日が確定しているため、映画屋はクラフトマンシップを発揮して期日までに必ず映画を完成させねばならない。そのことに大島は奮い立ったのだ。松竹に在籍した時期の大島は、常に公開日に追われていた。毎週新作が封切られ、それに間に合わせるようにスタッフが馬車馬のように走る撮影所システムの只中で映画を作ってきただけに、短期間の全力疾走によって大島映画の躍動が生まれた面もあった。また、『日本の夜と霧』や、松竹退社後に提携して作った『日本春歌考』(67)のように、そうしたシステムの隙間を突いて、公開日が決まっているのを逆手に取り、会社が内容に干渉する余裕がないことを良いことに、異色の映画を作ってしまうことも可能だった。そうした映画作りから大島は久しく遠ざかっていた。


 脚本は、東映で多くのやくざ映画を書いてきた高田宏治にすでに発注されており、そのことに大島も異論はなかった。当初、東映が考えていたのは、フィクサーとその内情を追うジャーナリストの話だった。しかし、大島はそれではダメだと別のストーリーを提案した。それは、次のようなものだった。


 フィクサーといえば、この時期に社会を賑わせていたのはロッキード事件の中心人物である児玉誉士夫である。児玉をモデルにしたフィクサーを主人公に、彼を殺しに来た少年テロリストがフィクサー邸に監禁され、やがて少年はフィクサーのボディガードとなり、最後には田中角栄をモデルとした元総理を殺しに行くというストーリーである。これは、失脚した田中が表の世界から消えれば政界最大のフィクサーになるはずだという予想から(実際その通りになったが)、そうなる前に児玉が田中を殺すだろうという未来を予見する内容だった。これならば、少年テロリストとフィクサーをめぐる父性の物語に加えて、闇の王座をめぐる劇になるはずだと大島は提案した。この案に高田も東映も乗った。




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