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『コンタクト』未知なる感情をどう表現するか?特殊効果との融合によって進化を遂げたジョディ・フォスターの名演
複雑なことは複雑に、余すところなく撮りきる
先のカメラワークにしても、おそらくは少女の動揺した心境を丁寧にすくい取ろうとして、あえて複雑な動線にて構築されたものなのだろう。ゼメキスは技術をひけらかそうとするのではなく、かといって省略して分かりやすく伝えるでもなく、時に「複雑なことは複雑なままに、余すところなくリアルに撮りきる」というスタンスを好むのだそうだ。
それゆえ、大勢の俳優たちが同じ場所で入り乱れる場面では、そのガヤガヤとした臨場感をリアルに抽出するために、あえて長回しを敢行したりもする。もちろんそのためには何度となくテイクを重ねる必要があるわけで、カメラマンの動きには熟練の技術が求められ、俳優陣にも繰り返しに耐えうるだけの経験が不可欠となる。
『コンタクト』(c)2009 Warner Bros. Entertaiment Inc. All rights reserved.
他にも、クリントン大統領の演説場面が組み込まれるそばで、会見場内をカメラが極めて複雑な軌道を描きながら動き回るなど(50分ごろ)、本当にマジックに等しい超絶的な演出がたびたび炸裂する。きっとゼメキスにとっては、特殊効果が全てではなく、材料のひとつとして用いることで、もう1次元、何かを突破して突き進むことにこそ真の狙いがあるのだ。