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『とら男』村山和也監督 未解決事件のその後を、本物の元刑事主演で描く 【Director’s Interview Vol.242】

(C)「とら男」製作委員会

『とら男』村山和也監督 未解決事件のその後を、本物の元刑事主演で描く 【Director’s Interview Vol.242】

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フィクションを逸脱させた虎男さんの生き様



Q:フィクションにするのではなく、現実の事件をダイレクトに扱うことにした理由は? 


村山:虎男さんを主演にするということは、虎男さんの生き様を描くことだし、それっぽい架空の事件をやるのは一番サムいなと思ったんです。あとご遺族にもお会いしたので、やっぱりヘタな描き方はできないじゃないですか。


Q:虎男さんは、インタビュー記事や著書の中で、いつの間にか自分が主演することになっていることに途中で気づいたと。監督は「事前に伝えました」と言うけれど、覚えてないと仰ってますね。


村山:さすがに僕もそこまで頭おかしくないんで(笑)、撮影の一ヶ月前くらいかも知れないですけど、「虎男さんが書かれている推理を描きたいので、出てくれないか」と話しました。「ああ、はい」みたいな、気のない返事が返ってきて。


Q:虎男さんは、最初に監督に会って喋ったときに撮られた映像が、エンドロールにちょっと流れるくらいかと思っていたと。


村山:確かに、虎男さんがそのことと勘違いしたのかも知れないです。実際、最初にお会いしたときに撮った素材をエンドロールに使って、そこから逆算して作ろうと思った時期もあったんです。そこで犯人像についての話もしていたので、最後にそこに繋がるような構成を考えていました。


それはそれとして、出演については了承を取ったつもりで、撮影直前のロケハンで虎男さんにも来てもらった時に、御本人が気づいたっていう(笑)。



『とら男』(C)「とら男」製作委員会


Q:役者ではない虎男さんを主演に使いたいと思った理由は?


村山:それは、やっぱり画が保つんですよ。『堕ちる』の中村まことさんは役者さんでしたけど、それでも映画の主演を張れる人の顔ってある程度決まってくると思うんです。自主映画を観ていて、画力のない人が主演してるように感じることってないですか? 『とら男』も自主映画ではあるんですけど、僕は一応CMディレクターでもあり、映像の仕事は10何年やっているので、そこはちゃんとやりたかったというか。


Q:とはいえ長編映画の主演に、まったく演技経験のない人を選ぶのは結構なリスキーな決断ではないですか?


村山:でも『堕ちる』で地下アイドルを演じていた「めめたん(錦織めぐみ)」も「めめたん」役で出てもらっていて、もともとヘタに演技するより素の感じでやってもらったほうがいいとは思ってたんです。もちろんレベルの高い俳優だったら、演技というところですごい表現はしてくれるんだけど、この映画で役所広司さんとかを雇えるお金はないですし(笑)。そこはバジェットやスケジュール感も含めて、虎男さんの本物の良さに賭けたというところです。





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