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『とら男』村山和也監督 未解決事件のその後を、本物の元刑事主演で描く 【Director’s Interview Vol.242】

(C)「とら男」製作委員会

『とら男』村山和也監督 未解決事件のその後を、本物の元刑事主演で描く 【Director’s Interview Vol.242】

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映画は世界を変えられると信じている



Q:先程、映画で現実を動かしたいというお話がありましたが、映画は現実にどこまで影響を与えられるものなのでしょうか?


村山:究極を言うと、世界を変える力があるんじゃないですか。それは映画に限らず、僕が作ったCMがとんでもなく影響力を持つことだってなくはないだろうし、映画にはもっと可能性があると思っています。世界を変えられると信じているというか、そういう気持ちで作ってはいますね。


Q:それは、人の心を動かすという意味なのか、それとも社会を動かせるという意味でしょうか?


村山:社会って、人の心が動かないと変わらないと思っているんです。社会運動の成功例って、全体の3.5%の人が動いたら成功するって言われてるんですね。僕の希望としては、石川県の人口の3.5%の人がこの映画を観たら、なにかが変わるかもと思ってるんですけど、それだと4万人なんで、今の観客動員としては結構厳しいんですが。でも本当に、人の心が動かせればなにかが変わるというのを信じている、という意味ではロマンチストなんでしょうね。


だから、観客はまだまだ足りないなと思ってるんで、地元でもそれ以外でももっと上映したいですし、今後もやれることはやっていくつもりです。映画を作って、もう終わりっていう感じではないですね。



『とら男』(C)「とら男」製作委員会


Q:具体的に、この映画を作ったことでどういう結果を望んでいますか?


村山:犯人が逮捕されて欲しいという話ではないです。人を殺しているわけだから、制裁を受けて欲しいという気持ちがまったくないわけではないですけど、すでに時効になっていて、本人も絶対に今も苦しいでしょう。告発をしたいわけではなく、あくまでも、虎男さんの生き様を描きたかったというのはありますね。


Q:その生き様というのは、現実の西村虎男さんなのか、映画の中のとら男さんなのか、どっちのものでしょうか?


村山:現実にはできなかったことに一歩踏み出した男……ということは、映画の中のとら男さんなのかな? 現実の虎男さんには奥さんもいるし、幸せな家庭もあるんで。ただ、映画の中のとら男さんには、虎男さんの実人生も入っている。


Q:パラレルワールド的な、ありえたかも知れない可能性でしょうか。


村山:そうですね。今、自分の中でも整理がつきました(笑)。


自分では意義はあったと思っていて、9月30日でちょうど事件から30年を迎えるので、地元で記事が出るとは聞いています(9月25日に北國新聞が記事を掲載)。でも、この映画がなかったら、たぶん忘れられてしまって、報じられることもなかったかも知れない。ご遺族が今取り上げられることを良しとしてるかどうかはわからないですけど、現実に起きてしまった事件がある以上、せめてなにかわかれば、整理がつくこともあるんじゃないかと思ってます。


Q:次回作の予定は?


村山:本当はもう動いていたいんですけど、基本はCMの仕事をやっていて、『とら男』は自己資金で結構な赤字なので、このやり方で続けられるんだろうかという迷いはあります。ただ、請負仕事で魂の入ってない映画をやりたいかっていうとまた違うんで、もう少し時間がかかってもいいから、また資金を貯めるなりして次の映画をやるのかなあ。ただ人生は短いですからねえ(笑)。


『とら男』が映画監督としての名刺代わりになるといいんですけど、戦略的にできた作品ではない。そこも含めて僕は基本的には不器用に生きていて、映画に関するとなぜかむちゃくちゃトラブルが多くて、いろいろモメたりしてしまうんです。幸いCMなんかの仕事はうまくいっているんですが、やっぱり映画は作り続けていきたいですね。



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※向かって左から主演の西村虎男、加藤才紀子、村山和也監督


監督・脚本:村山和也

1982年石川県生まれ。2002年ニューヨーク市立大学在学中に短編映画から映像制作を始める。帰国後、CM制作会社を経て2008年よりCM・MVを中心に映像ディレクターとして活動をスタート。2017年、映画「堕ちる」が、32分の短編映画ながら映画館で単独上映されるなど、国内外で話題を呼ぶ。



主演:加藤才紀子

1993年生まれ、東京都出身。「リップヴァンウィンクルの花嫁」(2016)にてスクリーンデビュー後、映画・ドラマ・CM などの映像作品を中心に活躍。 主な出演作に「飢えたライオン」(2018)、「普通は走り出す」(2019)、「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」(2020)、「春」(2021)など。劇場公開長編の主演作は本作が初である。



取材・文: 村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。




『とら男』

10月1日より横浜シネマリン、10月7日より別府ブルーバード劇場で公開、ほか全国順次公開中

配給:「とら男」製作委員会

(C)「とら男」製作委員会

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