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『とら男』村山和也監督 未解決事件のその後を、本物の元刑事主演で描く 【Director’s Interview Vol.242】

(C)「とら男」製作委員会

『とら男』村山和也監督 未解決事件のその後を、本物の元刑事主演で描く 【Director’s Interview Vol.242】

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未解決事件の犯人を描いた理由



Q:この映画では、かなりハッキリと真犯人について描いています。フィクションとして捉えるべきか観客として戸惑うところであり、監督の強い意思を感じる部分でもあるんですが、犯人をある程度明示する描写はどんな意図で入れたのでしょうか?


村山:自分でいろいろ調べた結果として、明確な意思をもってああいう表現にした、というのはあります。僕がプロデューサーを兼ねてなくて、別に客観的な立場の人がいたら、もうちょっと違った表現になったかも知れないですけど、良くも悪くも僕しかいなかった。自分の意思でやったというしかないですね。


ただ法律的には時効になっている話だから、どうしても言えることと言えないことがある。虎男さんが、現役の刑事だったときに間違った犯人の噂が流れたことを今も悔やんでいるように、僕がこの映画で別の噂を流してしまう可能性もある。そこはデリケートなところなので、配慮はしないといけないと思っています。それこそこの映画のせいで誰かが犯人にされてしまって、社会的に抹殺されるかも知れないですし。


でもあそこまで描いたことについては、僕自身の正義感も入っています。根底に、映画の枠を越えて現実の事件を動かしたいという目的はある。時効になっていてもう事件は解決できないし、犯人に名乗ってくれとは思わないですけど、なにかを感じてもらうきっかけになって欲しいし、なるべくリアルに近いというか、映画と現実との垣根が揺らぐようなものになって欲しいというのはありました。



『とら男』(C)「とら男」製作委員会


Q:現実の事件を扱ってはいても、決して謎解きミステリーが主軸ではないですよね。ものごとが忘れ去られて「生きた化石」とか「終わった」とか言われてしまうことへの異議申し立てはセリフにもあります。


村山:そのテーマはありますね。いろんな札がそろって気持ちよく終われる作品ではない。最初に「こういう事件でした」という解説があったほうがわかりやすいとは思ったんですけど、そこは迷いながらも、この形に落ちつきました。


僕自身、わかりやすすぎたり、セリフっぽいと冷めるというのはあって、なるべく観客が想像する余地があるようにしたいんです。ナレーションを使って説明するのも違うと思ったし、映画の進行とともに情報が増えていって、最終的にはどんな事件かわかるようにしたつもりです。


Q:虎男さんには、警察のミスで冤罪のような風評被害を生んでしまったことへの後悔があって、それを晴らしたくて本を書いたと仰っています。初期のプロットではそのことについて触れられていたと思うんですが、完成品では触れていませんよね?


村山:その場面は撮ってはいたんですけど、どうしても説明が多くなってしまうのと、本筋から逸れると思って外しました。真犯人ではない別の人に疑いがかかっていて、なぜそんなことが起きたのかというところまで描くのは大変だし、映画でそれを描いてしまうと、また噂を助長することにもなりかねない。ただ、冤罪の怖さについては、映画の中でとら男さんが書く「捜査10カ条」として入れています。


Q:虎男さんの本は、警察組織の問題を告発する意味合いも強いですね。


村山:そこについては、とら男の同僚の元刑事が出てくる場面である程度カバーしているつもりではあるんですが、警察の闇みたいなことに触れるのは難しいというか、やっぱり描く要素が多くなりすぎてしまうんですよね。フラッシュバックでとら男さんの昔の姿を入れるのもサムいなと思って、過去のシーンは殺された被害者まわりのところだけに留めました。


Q:殺害のシーンで被害者を演じているのはかや子役の加藤さんですよね? 事件を追っていたかや子が、事件をわがこととして追体験する――。


村山:そこ、わかりましたか? あまりわからないように撮ってはいるんですが、あの場面だけ役者が加藤さんに入れ替わってるんです。かや子が被害者に似てるって言われるシーンにも意図があって、かや子の動機の部分に繋がるように後から足しました。





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