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最新!A24のおすすめ映画57選!もはやオスカー常連の気鋭の映画会社
A24おすすめ映画57選! 2021~2023
46.『マルセル 靴をはいた小さな貝』(21) 監督:ディーン・フライシャー・キャンプ 90分
映像作家ディーン・フライシャー・キャンプが2010年にYouTubeで発表し、累計5,000万回再生を記録した短編シリーズを長編映画化。映像作家ディーンが引っ越し先で出会ったのは、体長約2.5センチのおしゃべりな貝マルセル。意気投合したふたりは、離ればなれになったマルセルの家族を捜すためにネットを通じて情報提供を呼び掛けるのだが……。
実写とストップモーションアニメを融合させた本作。マルセルとディーンの心温まる交流、マルセルの可愛らしさといったファニーな内容だけでなく、貝の目を通してみた社会や人生観、他者を“消費”するネット社会の功罪や現代におけるメディアの在り方まで言及する奥深いテーマが刺さる。
47.『Pearl パール』(22) 監督:タイ・ウェスト 102分
タイ・ウェスト×ミア・ゴスによる『X エックス』3部作の第2作。『X エックス』の60年前となる1910年代を舞台にした前日譚であり、前作の最狂老婆パールが、なぜシリアルキラーになったのかが明かされる。
銀幕のスターに憧れるも、厳格な母親に監視され、車いす生活の父親の介護に明け暮れるパール。農場に縛り付けられた状況から脱したい彼女の想いは、やがて狂気へと化していく。前作でパールと主人公マキシーンの2役に挑戦したゴスは、本作で若かりし頃のパールを演じるほか、共同脚本と製作総指揮も務めた。引きつったように笑い続ける彼女の怪演は「ミア・ゴスにオスカーを!」「女性版ジョーカー」と評判を呼んだ。
「映画」「戦争」「性」「宗教」「抑圧と解放」といった『X エックス』と通じるキーワードも多数。なお第3作『MaXXXine(原題)』は2024年公開予定とのこと。
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48.『CLOSE/クロース』(22) 監督:ルーカス・ドン 104分
長編監督デビュー作『Girl/ガール』(18)で、第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、カメラドール(新人監督賞)を受賞したルーカス・ドン監督の長編第2作。第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門のグランプリに輝いたほか、第95回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。
13歳の少年レオ(エデン・ダンブリン)とレミ(グスタフ・ドゥ・ワエル)は無二の親友同士。だが、クラスメイトにからかわれたことでふたりの間には距離が生まれてしまい、永遠に思えた関係に亀裂が生じていく――。
冒頭の花畑を2人が疾走していくシーンに始まり、詩情豊かな映像と言葉にならない思春期の脆く儚い心情を映しとった。なお、レオ役のダンブリンは電車内でドン監督に見初められたというシンデレラボーイ。
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49.『インスペクション ここで生きる』(22) 監督:エレガンス・ブラットン 95分
海兵隊在職中に映像記録担当としてキャリアを始めた異色の経歴を持つエレガンス・ブラットン監督の長編デビュー作。実体験を基に、海兵隊に志願した青年が四面楚歌の状況に置かれながら生き抜いていくさまをエモーショナルに描き出す。
16歳から10年間ホームレス生活を送っていた青年・フレンチ(ジェレミー・ポープ)は、生きるために海兵隊に志願。しかし訓練初日から教官にしごかれ、ゲイであることが知れ渡ると周囲から差別を受けてしまう――。
本作の特徴は、理不尽な状況下でも決して折れない主人公の精神性。2005年当時の米国&海兵隊のゲイに対する偏見を明かすショッキングな内容ながら、暴力や憎悪に屈せず、周囲からの理解を諦めないフレンチのひたむきさが、爽快感につながっている。
50.『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(22)監督:ダニー・フィリッポウ、マイケル・フィリッポウ 95分
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』© 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia
オーストラリアでYouTuberとして活躍するフィリッポウ兄弟の長編デビュー作にして、アメリカでスマッシュヒットを記録した降霊ホラー。母親の死のショックを引きずる高校生が気晴らしに参加した“90秒チャレンジ”。いわくつきの手の剥製らしきものを握ることで霊を自身に乗りうつらせるという危険な遊びにハマった結果、取り返しのつかない事態に発展してしまう。
霊以前に承認欲求に取りつかれており、命にかかわる光景を“おいしいもの”としてSNSに投稿してしまう若者の危うさを痛烈に突いた一作。「親離れ」というテーマも内包し、よくある「パリピが酷い目に遭うホラー」とは一線を画すような深みのある仕上がりになっている。ドラッグのトリップ状態に着想を得たという「黒目がどんどん広がる」降霊シーンのインパクトも強烈だ。本作のヒットを受け、既に続編製作が決定済み。フィリッポウ兄弟はA24の次なる推しクリエイターとして、今後も蜜月関係が続きそうだ。
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51.『僕らの世界が交わるまで』(22) 監督:ジェシー・アイゼンバーグ 88分
『僕らの世界が交わるまで』© 2022 SAVING THE WORLD LLC. All Rights Reserved.
『ソーシャル・ネットワーク』(10)等で知られる俳優ジェシー・アイゼンバーグの初監督・脚本作品。『ゾンビランド』(09)でアイゼンバーグと組んだエマ・ストーンがプロデュースし、ジュリアン・ムーアと『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(16〜)のフィン・ウォルフハードが親子を演じた。
DV被害者のシェルターを運営する母エヴリン(ジュリアン・ムーア)と、その息子で弾き語り配信者のジギー(フィン・ウォルフハード)。自己愛が強すぎる似た者同士のふたりの関係が、こんがらがっていく痛々しい姿をビターに描いてゆく。家族として大切に想い合いながらも、同族嫌悪でいがみ合ってしまうヤマアラシジレンマ的な距離感をユーモアと悲哀で味付けしたアイゼンバーグの手腕は、監督デビュー作ながら風格すら漂う。次なる監督作『A Real Pain(原題)』では主演も務め、サンダンス映画祭で好評を博したのちサーチライト・ピクチャーズが世界配給権を獲得するなど、視界は良好だ。
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52.『ストップ・メイキング・センス4Kレストア』(1984) 監督:ジョナサン・デミ 89分
『ストップ・メイキング・センス』(c)Photofest / Getty Images
ロックバンド「トーキング・ヘッズ」が1983年に行ったライブのドキュメンタリーフィルム。後に『羊たちの沈黙』(91)を手掛けるジョナサン・デミが監督、撮影を『ブレードランナー』(82)のジョーダン・クローネンウェスが担当した。4Kレストア版では、トーキング・ヘッズのメンバーであるジェリー・ハリスン自らサウンド監修を手がけ、同作をきっかけにバンドメンバーが約20年ぶりに再結集するなど、いち映画を超えたムーブメントを生み出した。日本国内でIMAX上映が行われた点も、メモリアルな出来事といえるだろう。
A24のプロモーションも多彩で、予告編ではトーキング・ヘッズのフロントマン、デヴィッド・バーンが代名詞の一つである特大のグレースーツをクリーニング店から回収する(=帰ってくる)という遊び心のある内容になっている。Tシャツやサウンドトラックのレコード盤、Tシャツ等のグッズ展開も行い、往年のファンを歓喜させた。
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53.『ボーはおそれている』(23) 監督:アリ・アスター 179分
『ボーはおそれている』© 2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.
『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』に続くアリ・アスター監督の長編第3弾。極度の不安症を抱える男が怪死した母の葬儀に参列するため出発するも、想像を絶するトラブルが相次ぎ……。現実と妄想が入り乱れる悪夢的な映像に舞台風の演出、絵本的なアニメーション等々、アスター監督のイマジネーションがスパークした強烈な一作。制作スタジオのロゴが出るオープニングから伏線が張られていたり、かと思えばラストが衝撃的な幕切れを見せたりと、緻密な部分と大胆な部分がドロドロに溶けあっている。
『ジョーカー』(19)でアカデミー賞主演男優賞に輝いたホアキン・フェニックスが、自身の“おそれ”に振り回される主人公ボーを怪演。常に何かにおびえたような表情や縮こまった姿勢等々、フェニックスの入り込みぶりが作品の異様さを存分に掻き立てている。なお、両者はネオ西部劇といわれる最新作『Eddington(原題)』でもタッグを組んでいる。
54.『パスト ライブス/再会』(23) 監督:セリーヌ・ソン 106分
『パスト ライブス/再会』Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
セリーヌ・ソン監督の長編デビュー作ながら各方面で激賞され、第96回アカデミー賞で作品賞と脚本賞にノミネートされたラブロマンス。韓国で暮らす少年少女が、少女の両親が米国移住を決断したことで12歳で離ればなれになるも、24歳のときにネット上で再会。36歳でようやくリアルで再会するも、女性はすでに既婚者となっていて……。米国を舞台に、ふたりが言葉を交わす“だけ”の切ない物語が展開する。
A24とCJエンターテインメントが共同製作した本作は、ソン監督の実体験をベースにしつつ、縁(イニョン)をテーマに自身の想いと相手への思いやりの狭間で葛藤する人々を美しい筆致で魅せる。メインとなる男女だけでなく、彼女の夫の人物像も「恋の邪魔者」的なステレオタイプなものにせず、心配や不安はあるものの2人を見守るという立ち位置に設定している。本作でブレイクしたソン監督の次回作にしてA24との再タッグ作『Materialists(原題)』は、ダコタ・ジョンソン、クリス・エヴァンス、ペドロ・パスカルらが出演予定。
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55.『アイアンクロー』(23) 監督:ショーン・ダーキン 130分
『アイアンクロー』© 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.
『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(11)や『不都合な理想の夫婦』(19)のショーン・ダーキン監督が、呪われたプロレス一家を題材にとった実録映画。ジャイアント馬場やアントニオ猪木とも戦い、「鉄の爪(アイアンクロー)」で知られるアメリカのプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックと息子たちの確執や支配関係、「男らしさ」が生み出す弊害等々を生々しく描いてゆく。
次男ケビン役にザック・エフロン、三男デビッド役に『逆転のトライアングル』(22)のハリス・ディキンソン、四男ケリー役に「一流シェフのファミリーレストラン」(22〜)のジェレミー・アレン・ホワイトといった次世代のスターが集結。各々が肉体改造に励み、レスラーになりきった説得力や試合シーンの臨場感はもとより、一家の華々しい活躍の陰にあった衝撃的な真実の数々が観賞後も尾を引く。
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56.『プリシラ』(23)監督:ソフィア・コッポラ 113分
『プリシラ』©The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023
A24とのタッグも数多いソフィア・コッポラ監督が、世界的歌手エルヴィス・プレスリーの元妻プリシラに焦点を当てた物語。一世を風靡していたプレスリーと出会って恋に落ちた14歳のプリシラ。両親の反対を押し切って彼と暮らし始めた彼女は、どんなときも「プレスリーの恋人/妻」として振る舞わねばならない環境に染まってゆく。
『パシフィック・リム アップライジング』(18)のケイリー・スピーニーがプリシラに扮し、第80回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。プレスリーを演じたのは、『Saltburn』(23)で注目を浴びたジェイコブ・エロルディ。『マリー・アントワネット』(06)『SOMEWHERE』(10)ほか、喧騒と孤独を対比させてきたコッポラ監督らしい仕上がりになっており、60~70年代を再現したビジュアルの数々も出色。衣装を『SOMEWHERE』や『The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ』(17)ほか常連のステイシー・バタット、美術を『ナイトメア・アリー』(21)のタマラ・デヴェレルが担当している。
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57.『関心領域』(23) 監督:ジョナサン・グレイザー 105分
A24の初期作『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のジョナサン・グレイザー監督による新作で、第76回カンヌ国際映画祭グランプリ、第96回アカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞した衝撃作。
アウシュビッツ強制収容所の隣で裕福な生活を送る所長とその家族の平和な日々を淡々と映し出すことでそのおぞましさを突き付ける内容になっており、一家の団らんの様子を映したカットの背景に収容所が見えたり、叫び声や銃声ほか収容所の暴力的行為に付随する音が生活音に混ざり合う。引いた視点に終始した静謐な作品(が故に恐ろしい)だが、物語の転換点に『MONOS 猿と呼ばれし者たち』(19)や『Zola/ゾラ』の作曲家ミカ・レヴィによる攻撃的なサウンドが挿入されるなど、全体を通してテクニカルな一本といえる。所長の妻を演じるのは『落下の解剖学』(23)のサンドラ・ヒュラー。
2022年に設立10周年を迎えたA24。今後の日本公開予定作としては、アレックス・ガーランド監督の新作にしてA24最大規模の『CIVIL WAR(原題)』、『X エックス』シリーズの完結編となる第3作『MaXXXine(原題)』(24)、セバスチャン・スタンが第74回ベルリン国際映画祭の最優秀主演男優賞に輝いた『A Different Man(原題)』(24)、アリ・アスターがプロデュースし、『シック・オブ・マイセルフ』(22)のクロストファー・ボルグリが監督したニコラス・ケイジ主演作『Dream Scenario(原題)』(23)、『セイント・モード/狂信』(19)のローズ・グラス監督とクリステン・スチュワートが組んだ『Love Lies Bleeding(原題)』(24)ほか強力なラインナップがひしめいている。
この先も、映画ファンの心のよりどころになっていくことだろう。
文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「シネマカフェ」「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
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