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大ヒットシリーズ『ワイルド・スピード』全9作品を勝手にランキング!サーガの終わりと新たな始まりが見えてきた! ※注!ネタバレ含みます。
第6位:『ワイルド・スピード』(01) 監督:ロブ・コーエン 107分
“ファミリーの絆”の原点となった記念すべき第一作
コレなくしてはシリーズ全体も存在しなかった一作目。繰り返し言われていることは、カリスマサーファーが率いる強盗団にFBI捜査官が潜入するキアヌ・リーヴス主演作『ハートブルー』(91)の亜流だということ。サーフィンがストリートカーレースになったものの、ほとんど同じプロットであることは否定できない。最初のアイデアを出したのは、実はブライアン役のポール・ウォーカーだったという。
当時のウォーカーはイケメン俳優として売出し中で、監督のロブ・コーエンと製作のニール・H・モリッツとは『ザ・スカルズ/髑髏の誓い』(00)で仕事をしたばかりだった。コーエンとモリッツはウォーカーに「次には何をしたい?」と訊ね、ウォーカーがかねてから考えていたカーアクション映画『デイズ・オブ・サンダー』(90)と潜入捜査映画『フェイク』(97)のハイブリッドというアイデアを提供したのだという。
ただし、ウォーカー自身にエンタメ大作の看板を背負うプレッシャーがあり、そこでカリスマ性のある共演者を用意して安心してもらおうと起用されたのがヴィン・ディーゼルだった。またミア・トレット役のジョーダナ・ブリュースターは1998年の『パラサイト』でデビューした新進女優、ミシェル・ロドリゲスは2000年のインディー映画『ガールファイト』で文字通り無名から発見されたばかりの原石。いずれにせよ、ネームバリューのあるビッグスターは皆無で、まだ未来はこれからという若者たちをキャスティングしての船出だった。
本作が結果的に『ハートブルー』の亜流を超えた作品になったのは、ラテン系コミュニティが持つ家族的な絆を扱ったことが大きかった。ウォーカー演じるブライアンこそ金髪碧眼の二枚目という当時でさえ古風なビジュアルの主人公だが、ディーゼル、ブリュースター、ロドリゲスらラテン系のメインキャラが象徴していたのはハリウッドで顧みられることの少なかったマイノリティの存在であり、世界各地で新たなファン層を開拓する上でも非常に効果的だった。
マイノリティ同士の結束というモチーフは本シリーズを構成する大きな要素のひとつになっていくのだが、一作目の時点では製作陣のスタンスはまだあやふやで、そこに激しく噛み付いたのがレティ役のロドリゲスだった。ロドリゲスは初めてのハリウッド映画出演だったにも関わらず、最初の脚本に不満を持ち、修正されないなら出演しないと主張したのだ。
当初の脚本には、レティがドミニクの恋人でありながらブライアンにも惹かれる三角関係の展開が用意されていたという。しかしロドリゲスはラテン系文化も踏まえて「最高の中の最高の男性がいるのにイケメンと浮気するなんてありえない」と主張したのだ。ロドリゲスは「どうか訴えないで、でも、何百万人の前でこんなことはできません」と泣いたと回想している。まだ新人だった彼女の必死の想いが、「ワイスピ」シリーズに欠かせない“魂”をもたらしたと言えるかも知れない。
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