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大ヒットシリーズ『ワイルド・スピード』全11作品を勝手にランキング!最新版 サーガはいよいよクライマックスに! ※注!ネタバレ含みます。
第7位:『ワイルド・スピード ファイヤーブースト』(23) 監督:ルイ・ルテリエ 141分
シリーズ完結に向けてお祭り度が増した破天荒超大作
シリーズ完結のために再招聘されたはずのジャスティン・リンが撮影開始一週間で降板するという、『SKY MISSION』でのポール・ウォーカー事故死に次ぐ大トラブルに襲われた10作目。しかし一週間後には『トランスポーター』シリーズで知られるルイ・ルテリエが新監督に就任。監督選考中も撮影は続けられるという異例づくしの状況で、なんとか完成にこぎつけることができた
シリーズの大転換点となった第五作『MEGA MAX』に立ち返って、あの時倒したブラジルの麻薬王レイエス(ジョアキム・デ・アルメイダ)の息子ダンテ(ジェイソン・モモア)が復讐にやってくるというアイデアは、シリーズ完結に続くプロットとしてふさわしい。
しかし、前述の監督交代劇が影響したのか、大きなアクションの見せ場が数珠つなぎになっているだけで有機的に絡み合っておらす、本作から筋の通ったストーリーを見出すのは難しい。ダンテが恐るべき復讐の鬼なのか、実はドミニクたちにかまってほしいだけの愉快犯なのかが判別としない一貫性のなさも、迷走っぷりに拍車をかけている。
とはいえジェイソン・モモア扮するダンテは、シリーズのヴィランでも屈指のトリックスターであり、モモアがとにかく楽しそうに演じているものだから、ついドミニクよりもダンテを応援してしまいたくなる。またジョン・シナもレスラー時代の陽性さをジェイコブ役に注ぎ込み、前作とは打って変わってイキイキとリトル・ブライアン(レオ・アベロ・ベリー)との叔父さん甥っ子コントに励んでいる。
ルテリエは一作目のリアルなカーレースをシリーズに取り戻したかったと発言しているが、ローマの街中で実際に巨大な玉(中身は中性子爆弾)がゴロゴロと転がして撮影するなど、荒唐無稽さは天井知らず。「ワイスピ」に理屈を求める人は少ないにしても、シリーズで一番バカげた状況にあふれた映画かも知れない。
しかし、ラストシーンのジゼル再登場!と、「復帰は二度とない」と断言していたドウェイン・ジョンソンことホブス捜査官の再登場!のサプライズ二連発には「キタキタキタ!」と笑って盛り上がる以外の選択肢はない。今後の辻褄合わせをどうするのかが見ものだし、「ワイスピ」はもはやそういう裏も表もひっくるめて楽しむエンタメなのだと思い知らされる、豪快な力技で押し切った一本である。