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『スーパーガール』スーパーマンはなぜ『スーパーガール』に登場しなかったのか?【そのとき映画は誕生した Vol.2】

(c)Photofest / Getty Images

『スーパーガール』スーパーマンはなぜ『スーパーガール』に登場しなかったのか?【そのとき映画は誕生した Vol.2】

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巨大セットで町をつくる



 1983年4月18日、ロンドンのパインウッド・スタジオでクランクインした『スーパーガール』は、大きなトラブルに見舞われることもなく、秋のクランクアップまで順調に進んだ。同時期にこのスタジオでは、スティーヴン・スピルバーグ監督『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)の撮影が行われていたが、こちらは秘密裏に進められており、『スーパーガール』のスタッフは誰一人として、撮影の様子をうかがうことはできなかったという。


 それにしても、『スーパーマン』シリーズが毎回トラブルの連続だったことを思えば、意外なほどスムーズに撮影は進んだが、これはヤノット・シュワルツ監督が、クセの強いプロデューサーであるサルキンド親子のコントロール術に長けていたことが幸いしたようだ。フランスで少年期を過ごしたイリヤと、フランス出身のシュワルツには共通点も多く、意思疎通が上手くいったのである。また、懸念されていたフェイ・ダナウェイも、主演が新人ということもあって対抗意識を燃やすこともなく、悪役を愉しむ余裕があった。友人役のブレンダ・ヴァッカロを気に入り、撮影以外の時間もいつも一緒にいたこともトラブルを防ぐのに役立ったようだ。


 飛翔シーン以外に最も困難と思われたのは、前半の見せ場となるショベルカーが町を暴走する場面である。魔女セレナが、造園師のイーサン(ハート・ボックナー)に一目惚れする魔術をかけたところ、彼はフラフラと町に出てしまい、連れ戻すためにショベルカーを魔術で操るが、町は大混乱に陥る。それを救ったのがスーパーガールで、イーサンは彼女を見て、たちまち恋してしまう。



『スーパーガール』(c)Photofest / Getty Images


 実はこの何の変哲もないアメリカのスモールタウンは、パインウッド・スタジオの裏手に、東京ドーム約1.15個分の土地をつかって、丸々つくりあげたセットである。あまりにも細部まで精巧にできていることから、どこかでロケーションしたように思われることも多いが、セットだからこそ、ショベルカーがガソリンスタンドを破壊し、さらに巨大なタイヤが町に転がっていくなかで、スーパーガールが自由自在に翔びながら事態を収拾するという大がかりなシーンを撮ることが可能になったのだ。


 この町のセットでの撮影は3週間を予定していたが、晴天の日を選んで撮ることになっていたので、イギリスの天候からして、2か月はかかるのではないかと思われた。ところが21日連続で好天が続くという奇跡的な幸運に恵まれ、1日の無駄もなく撮り終えることができた。


 このシーンからもわかるように、本作は『スーパーマン』のような世界の都市を舞台にしたスケールの大きな映画ではなく、限定された町を舞台にした〈スモールタウン映画〉である。劇中でセリナは町の中心に巨大な山を築き、その頂上に邸宅を構えて町を支配下に置くが、すべては、この小さな町の中で発生し、解決されるストーリーになっている。


 ところが、特報や予告編があまりにも『スーパーマン』と同じスタイルで作りすぎていたせいか、テスト試写では、『スーパーマン』シリーズの続編と考える層からは、期待はずれという声が聞こえてくるようになる。それは、深刻な打撃を本作に与えることになる。




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