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クリストファー・ノーラン監督作品まとめ 突き抜けた作家性とメガヒットを両立させる鬼才

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クリストファー・ノーラン監督作品まとめ 突き抜けた作家性とメガヒットを両立させる鬼才

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6.『ダークナイト』(08) 152分


(c)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.


今日に至るまで、数えきれないほどの作品に影響を与え続けてきた、ゼロ年代映画の金字塔。バットマンの宿敵ジョーカーを演じたヒース・レジャーが、死後オスカーを受賞したことも、作品の名声を一層高めている。


前作『バットマン ビギンズ』の裏テーマが「恐怖」だとしたら、本作で描かれるのは「善悪」だろう。腐敗が進むゴッサム・シティを浄化するべく、バットマン(クリスチャン・ベール)、検事のハービー・デント(アーロン・エッカート)、市警のジム・ゴードン(ゲイリー・オールドマン)の3人が結託。時を同じくして、狂気の権化ジョーカー(ヒース・レジャー)が動き出す。金や権力に無頓着で、純粋に破壊を愉しむ敵に、彼らはどう挑むのか――。


恋人と検事のどちらを選ぶのか、囚人と市民のどちらを生かすのかなど、全編にわたってジョーカーが揺らす「善悪の秤」と「二者択一」は、登場人物のみならず、我々の価値観にも強く訴えかける。「話す相手によって出自が変わる」得体のしれないジョーカーの不気味さ、理解のできなさも、当時の観客に衝撃を与えた。無機質なヴィラン(悪役)像を構築した『ノーカントリー』(07)との対比も、興味深い。 


ヒーローの在り方にも一石を投じるシーンがちりばめられ、バットマンがジョーカーをひき殺せず、代わりに自分が傷を負う場面などが象徴的だ。映像的にも、冒頭シーンの流れるような銀行強盗のシーンから、ゴードンの語りで締めるラストに至るまで、2時間半という長さをまったく感じさせない没入感が続く。


ノーラン作品の特色といえる「無限音階」を使った緊張感を高める音楽、実際に行ったという病院の爆破シーン、走行テストまで行ったバイク「バットポッド」の設計など、舞台裏も趣向の連続で、深堀りしがいのある映画だ。ジョーカーのひび割れた白塗りのメイクにも、キャスト・スタッフのこだわりがにじむ。


なお、本作は米国内の歴代興行収入で、現在第12位(国内ではノーラン史上最大のヒット作)。『007』シリーズにも強い影響を与えており、シリアスなリアリティ路線へと変更がなされたと言われている。『007 スカイフォール』(12)の敵役シルヴァの行動に、本作のジョーカーを重ねた方も多いだろう。


もっと詳しく:『ダークナイト』全てはここから始まった!アメコミ映画の定石をことごとく覆した、クリストファー・ノーラン


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