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クリストファー・ノーラン監督作品まとめ 突き抜けた作家性とメガヒットを両立させる鬼才
3.『インソムニア』(02) 118分
ノーラン監督がメジャースタジオと初めて組んだ本作は、彼のフィルモグラフィの中で、やや異端の部類といえるだろう。1997年の同名ノルウェー映画のハリウッドリメイクで、ノーランは監督としてしかクレジットされていない(脚本には携わっているようだが)。
アラスカ内の白夜の町で、少女の猟奇殺人事件が発生。捜査に駆り出されたベテラン刑事(アル・パチーノ)は、慣れない環境で不眠症に陥ってしまう。さらにあるアクシデントに巻き込まれ、謎の男(ロビン・ウィリアムズ)に利用される羽目に……。
アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクといった3人のオスカー受賞者が出演しており、彼らの演技対決が見もの。特に、不眠症に侵されて疲弊していくパチーノのリアルな芝居や、善人のイメージが強いウィリアムズの狂的な怪演が記憶に残る。
本作ではジョージ・クルーニーとスティーヴン・ソダーバーグが製作総指揮を務めており、『メメント』でノーラン監督を見出したふたりが抜擢した模様。90年代から00年代前半は『羊たちの沈黙』(91)、『セブン』(95)、『ボーン・コレクター』(99)などサイコサスペンスがブームで、本作もその潮流にあるといえよう(『ファーゴ』(96)的な不条理サスペンスの流れもあろう)。
オリジナル作で能力を見せつけてきた感のあるノーラン監督だが、本作のじっとりとした「登場人物を追い詰めていく」演出は冷徹で、『メメント』からより洗練された“演出家”としての技量を披露している。ダイナミックな風景の切り取り方は、『インターステラー』(14)にも受け継がれている。