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クリストファー・ノーラン監督作品まとめ 突き抜けた作家性とメガヒットを両立させる鬼才

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クリストファー・ノーラン監督作品まとめ 突き抜けた作家性とメガヒットを両立させる鬼才

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10.『ダンケルク』(17) 106分


(c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.


押しも押されぬ名匠の域に達したノーラン監督が次に挑んだのは、「実話」を基にした「戦争ドラマ」。第二次世界大戦中の1940年、フランスのダンケルク海岸で起こった救出作戦の一部始終が、息もつかせぬスピードと怒涛の戦闘シーンで画面から立ち上がる。


本作が他の戦争映画と一線を画す部分は、「陸・海・空」の3つで、物語が展開するということ。圧倒的窮地に追い込まれた兵士たちのサバイバル、民間船が請け負った救出任務、空軍パイロットたちの戦い、といった具合だ。「複数視点」での物語だけなら類似作品はあるが、ノーラン監督はまたもや「時間」というキーワードを組み込み、「陸・海・空、それぞれに流れる時間が違う」という新機軸の物語を生み出した。


過去から現在、未来に向かって流れる時間の構造は同じだが、描かれる「時点」が異なっており、多層的な視点の効果を一層強めている。「陸」は1週間の期間、「海」は1日、「空」は1時間…といった形だ。しかも、その点に関して説明などは特にないため、ドキュメント的な映像が3種類、同時展開するという、これまでにない映像体験が待ち受けているのだ。この時間の使い方は、かつてない「発明」と呼べるのではないか。


各パートの密度が濃いため、106分というノーラン作品の中では比較的短い時間の中でも、十二分に成立している。爆破シーンや、銃撃シーンの描写も考え抜かれており、飛行機の機体にカメラを設置し、実際に飛ばす中で撮影したり、当時の機体を墜落させたり船を水没させたりと、またしても「本物志向」のノーランらしい、手に汗握るシーンが炸裂。


「渦中」を描く物語のため、緩やかに感情に訴えかけるようなドラマ曲線とはやや異なり、あたかも戦場にいるかのような緊迫感が、永遠かと思えるような絶望感とともに続くのも意義深い。ワンカット手法で戦場の臨場感を創出したサム・メンデス監督作『1917 命をかけた伝令』(19)と合わせて観てみるのも、一興だ。


もっと詳しく:『ダンケルク』戦闘機も船も実物を使用。過剰なまでの「本物志向」で、先達の意思を受け継ぐクリストファー・ノーラン


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