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『シモーヌ』生成AIを予見した驚くべき先見性(後編) ※注!ネタバレ含みます

(c)Photofest / Getty Images

『シモーヌ』生成AIを予見した驚くべき先見性(後編) ※注!ネタバレ含みます

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ホログラムでコンサートは表現可能なのか



 劇中で描かれたような、“ホログラムコンサート”と称するイベントは世界各地で行われている。実際に動画のホログラムの開発は行われているが、まだ数センチ角サイズのボンヤリした映像が限界だ。では、どうやって“ホログラムコンサート”は、“疑似的”に実施されているのだろうか。


 一番広く用いられている技法(*7)は、「ペッパーズ・ゴースト」というものだ。これは1862年に英国のヘンリー・ダークスが、黒バックに立たせた人物をハーフミラーに反射させ、舞台に立つ役者と重ね合わせて、幽霊を出現させる仕掛けを考案。さらにこれを、ロイヤル・ポリテクニック・インスティテューション(現ウエストミンスター大学)のジョン・ヘンリー・ペッパーが改良したことから、ペッパーズ・ゴーストと呼ばれるようになった。(*8)


 一時期は忘れられたものの、69年にオープンしたディズニーランドの「ホーンテッドマンション」に採用され、再び注目される。


 このように古典的技術でありながら、“ホログラム映像”と誤解されて広まるには、あるきっかけがあった。それは86年にバンクーバーで開催された「国際交通博覧会」の「ゼネラル・モーターズ館」のアトラクション「Spirit Lodge」である。ディズニー出身のディレクターであるボブ・ロジャーズが、これを「Holovision」と呼んだことから、世間はこれをホログラフィだと勘違いするようになる。


 さらに大きく発展するきっかけとなったのは、英国のミュージョン社が、従来のハーフミラーに代わって、難燃性の三層ポリマーシートを用いる「ミュージョン・アイライナー」を開発したことだった。これならば、会場にロール状態で持ち込みができるため、最大で幅100mまで対応できる。映像は普通の2D素材を、プロジェクターで投影、ないしLEDウォールに表示して、ポリマーシートに反射させるだけなので、特別な処理は必要ない。


 そしてこのシステムが世界的に知られるようなったのは、12年に開催された「コーチェラ・フェス」において、96年に殺害された米国のラッパー、2Pacのヴァーチャルパフォーマンスをを実現させた時である。これは2Pacに似た体形のパフォーマーをビデオ撮影し、その頭部をデジタル・ドメイン社が3DCGで置き換えたものだった。


 これをきっかけに、亡くなったり、引退した有名人を復活させるヴァーチャルコンサートが世界各地で行われ、これを専門とするパルス・エヴォリューション社のようなプロダクションも現れる。


 このパルス社と、スウェーデンのエンターテイメント企業であるポップハウス社は、共同で「ABBA Voyage」というプロジェクトを企画した。これは、すでに解散しているスウェーデンのポップグループABBAを、ヴァーチャルで復活させるというもの。映像は本人たちが歌う姿を、ILMが約160台のカメラを用いてモーションキャプチャーし、3DCGによるディエイジング処理を施して若返らせたものを使っている。コンサートは22年5月からロンドンで行われている。これはイメージとして、『シモーヌ』の劇中描写に近いと言えよう。


「ABBAバーチャルコンサート」メイキング


*7 疑似ホログラムにはペッパーズ・ゴーストの他にも、透明スクリーンやメッシュスクリーンを用いるもの、LEDアレイを高速回転させるもの、フォグやミスト、噴水などでスクリーンを形成するものなどがある。


*8 ペッパーズ・ゴースト技術は、たちまち全世界に拡がり、日本にも明治3年(1870年)に「劇場幽霊の術 光線反射法応用」として伝えられている。そして、1914年に開催された「東京大正博覧会」のアトラクション「美人嶋旅行館」は大反響を巻き起こし、社会現象にまでなった。





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