あらすじ⑨
エレインはシモーヌに激しい嫉妬心を覚えていた。その態度にウンザリした、夫のケントは別れを切り出す。元両親の復縁を期待しているレイニーは、このことをタランスキーに告げ、シモーヌにエレインと直接対話させて欲しいと願う。
翌日、ハイウェイをジャガーXJで走っていたエレインに、シモーヌから電話が掛かってきた。そしてエレインの車に、タランスキーのベントレーS3コンチネンタルが横付ける。ベントレーの運転席にはシモーヌに似せたマネキンが陣取り、タランスキーは助手席で身を隠しながら運転している。タランスキーはシモーヌの声で、「アカデミー賞の授賞式には、タランスキー監督と同席してもらないかしら」とエレインに頼む。
そして授賞式当日、タランスキーはエレインやレイニーと並んで発表を待っていた。結果は、『サンライズ・サンセット』と『永遠の彼方』で、シモーヌが最優秀主演女優賞を同時受賞するという快挙を成し遂げる。シモーヌは、慈善活動のために海外に行っているという設定で、紛争地帯の映像を背景にした中継を送って来る。しかし、彼女の謝辞はハンクのみに向けられ、タランスキーには一言の礼もなかった。
ステージに戻ったタランスキーは、自分で吹き込んだ「タランスキー監督に感謝を。彼こそすべての創造者」という音声を何度もチェックする。しかし、発表当日にこのコメントは発せられなかったし、その原因も不明のままだ(この理由は最後まで明らかにされない)。
やがてタランスキーが次回作の準備に入っていると、シモーヌの姉役として、あのニコラ(ウィノナ・ライダー)が応募してきた。彼女はすっかりしおらしくなり、アル中を克服して、演技もイチから勉強したと言う。そしてキスシーンを、タランスキーを相手にして演じて見せる。彼は少し動揺し、「主役は君にする」と言ってしまう。ニコラが「主演はシモーヌなのでは?」と言うと、タランスキーは「そうだな…。でも君は美しい。その頬のラインとか、今度はシモーヌにも与えてみよう」と呟いてしまい、ニコラは「整形させるの?」と不審がる。
スタジオでタランスキーは、レイニーの誕生日に62年式アルファロメオ2600スパイダー・ツーリングをプレゼントする。これは、『永遠の彼方』でシモーヌが乗っていた車だ。しかし、レイニーは受け取りを拒否し、代わりに「昔のヴィクター・タランスキーに戻って。パパはシモーヌの名声に引きずられている。彼女はパパに感謝すらしないわ。彼女はパパを利用しているだけ」と言って去って行く。翌日、タランスキーはエレインをビーチハウスに誘い出して復縁を迫り、同時にシモーヌがヴァーチャルな存在だということを告白する。
タランスキーはシモーヌと決別すべく、彼女が「ウエディングドレスを着て泥の中を這い回り、ブタといっしょにエサをあさる」といった、60年代のアングラ映画のような『私はブタ』を、シモーヌ自身の監督作品として作る。しかし、こんな映画でも人々は称賛し、タランスキーは苛立つ。
そこでタランスキーは、生放送のテレビ番組にリモート出演し、徹底的にやさぐれたシモーヌを演じる。そして、過激で反社会的な発言を繰り返し、評判を落とそうと企んだ。だが彼の思惑に反し、彼女の人気は高まる一方だった。タランスキーは、「死ね! クソ女! 破滅させてやる」と怒鳴る。しかしその声は、秘書に聞かれていた。